農業現場の課題に光を当てる「イナリス」の登場
日本の農業現場では、農地の管理や調査に多くの時間と労力が費やされています。特に、各種交付金の申請に必要な農地調査は、広大な土地を対象とすることが多く、紙の地図を基にした現地確認や手作業によるデータ入力が主流でした。これは、担当職員にとって大きな負担となり、人手不足の課題も相まって、業務の効率化が喫緊の課題となっています。
このような状況を背景に、株式会社デジオンは、生成AI(ジェネレーティブAI)と衛星データを組み合わせた画期的な農地調査支援サービス「イナリス(TM) Powered by DiXiM Imaging AI」を2026年4月より正式に提供開始しました。このサービスは、農地調査にかかる時間を劇的に削減し、農業現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に推進することが期待されています。

「イナリス」とは?生成AIと衛星データの融合がもたらす革新
イナリスは、これまで多くの手間がかかっていた農地調査業務を、最新のAI技術と衛星データを活用することで、より早く、より正確に行うための支援サービスです。特に注目すべきは、以下の二つの技術の融合です。
生成AIによる「超解像化技術」で衛星画像が劇的に鮮明に
「超解像化技術」とは、画質の粗い画像をAI(人工知能)が分析し、失われた情報を推測して、まるで元から高画質であったかのように鮮明な画像に変換する技術のことです。イナリスでは、この生成AI技術を応用し、中程度の解像度しかない衛星画像を最大4倍(62.5cm相当)まで高精細化します。
これにより、これまで現地に行かなければ判別が難しかった圃場(ほじょう:農地の一区画)の境界線や、畔(あぜ:田畑の境にある土の盛り上がり)の状態などを、事務所のパソコンやタブレットからでも鮮明に確認できるようになります。まるでドローンを飛ばしたかのような詳細な情報を、手軽に、そして迅速に得られるため、調査における判断や事前の絞り込み作業を強力にサポートします。
衛星データ解析で農地の状況を自動判定
イナリスは、衛星から得られたデータを解析する技術も活用しています。この解析には、一般財団法人リモート・センシング技術センターが開発したアルゴリズムが使用されており、農地の「作付け状況(水稲など)」や「耕作放棄地」をAIが自動で判定します。
これにより、「現地調査が必要な農地」と「現地調査が不要な農地」を事前に区別できるようになります。全ての農地をしらみつぶしに調査する必要がなくなるため、調査対象を効率的に絞り込み、本当に確認が必要な場所にだけ人員を集中させることが可能になります。これは、限られた人員で広大な農地を管理する自治体や農業団体にとって、非常に大きなメリットとなります。
イナリスの主要機能:農地調査をスマートに変える5つのポイント
イナリスは、農地調査の現場で働く人々の声を徹底的に反映して開発されました。そのため、使いやすさと実用性を兼ね備えた、以下のような特徴的な機能が搭載されています。
1. タブレットで現地調査を完結!作業の大幅な省力化
イナリスの「現地調査向け機能」を使えば、農地の利用状況(管理状況や作付け品種など)をタブレットに直接記録できます。これにより、紙の地図や調査票を持ち歩く必要がなくなり、現地での調査作業をタブレット一つで完結させることが可能です。また、「管理者向け機能」では、農地台帳情報の一覧表示やエクスポートができるため、現地調査で得られた結果を農地台帳システムへ入力する作業も大幅に効率化できます。

2. 各種交付金調査業務にも対応
イナリスは、特に「水田活用の直接支払交付金」に伴う現地調査業務に活用できるよう設計されています。さらに、今後は「中山間地域等直接支払交付金」や「多面的機能支払交付金」といった他の重要な交付金調査業務への対応も予定されており、より多くの農業関連業務でその効果を発揮することが期待されます。
3. 超解像化衛星画像で農地の細部まで把握
先述の通り、イナリスは独自の生成AI技術により、衛星画像を最大4倍に超解像化し、高精細な地図画像として表示します。これにより、事務所にいながらにして、これまで現地に行かなければ判別が困難だった圃場や畔の境界を鮮明に確認できます。この機能は、調査の事前準備や、現地で確認すべき箇所の絞り込みにおいて、非常に強力なサポートとなります。
4. 衛星データ解析で「本当に必要な調査」を自動抽出
イナリスのもう一つの大きな強みは、衛星データ解析によって農地の利用状況を自動で判定できる点です。「作付け状況(水稲など)」や「耕作放棄地」を自動で識別し、「現地調査が必要な農地」だけを抽出することが可能です。これにより、全ての農地をしらみつぶしに調査する手間がなくなり、調査員の負担を大幅に軽減し、より効率的な調査計画を立てることが可能になります。
5. 現場の声から生まれた「使いやすいUI」
イナリスの開発過程では、実際に農地調査の現場に開発者が同行し、実務者のリアルな声を徹底的に反映しました。そのため、以下のような工夫が凝らされています。
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少ないステップで調査結果を簡単に記録できる設計
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文字入力を極力減らし、タップ中心で直感的に操作できるインターフェース
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車内などでも押しやすい、大きめのボタンエリア
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直射日光下でも画面が見やすい、視認性の高い配色設計
これらの工夫により、デジタルツールに不慣れな方でもスムーズに操作でき、ストレスなく業務を進められるよう配慮されています。

福岡県飯塚市での実証が示す圧倒的な効果
イナリスの有効性は、2025年8月から2026年2月にかけて福岡県飯塚市と共同で実施された実証事業によって、具体的な数値で証明されました。この実証は、令和7年度「福岡県宇宙関連ビジネス製品・サービス開発支援事業」の採択を受けて行われたものです。
作業時間の劇的削減:81%の時間短縮
実証の結果、イナリスを導入することで、従来の紙地図を用いた手法と比較して、全調査対象者の作業時間を81%も削減できることが明らかになりました。これは、地図作成や手入力作業といった、これまで多くの時間を費やしていた業務が撤廃されたことによるものです。大幅な時間短縮は、人件費の削減だけでなく、職員の他の重要な業務への集中を可能にします。
現地調査の省略:約6割の圃場で現地確認不要に
衛星データによる作物判定(水稲・小麦等)の精度も非常に高く、評価対象となった圃場の57.6%において、現地での確認を省略しても問題ないと判定されました。これは、調査員が広大な農地を一つ一つ巡回する労力を大幅に削減できることを意味し、調査業務の効率化に大きく貢献します。
メンタルワークロードの軽減:職員の心理的負担を52%削減
NASA-TLX指標(作業負荷を評価するための国際的な指標)を用いた評価では、職員の主観的な作業負荷(心理的負担)が52%軽減されたという結果が得られました。作業時間の削減だけでなく、精神的な負担も大幅に減ることは、職員のモチベーション維持や離職率の低下にも繋がる、非常に重要な成果と言えるでしょう。
これらの成果は、イナリスが単なる業務効率化ツールに留まらず、現場で働く人々の働き方そのものを改善する可能性を秘めていることを示しています。

より詳細な実証事業のレポートは、以下のリンクから確認できます。
- 農地情報調査支援サービス「イナリス(TM)」実証事業レポート: https://www.digion.com/product/inaris/case/iizuka-city/
イナリスの導入方法と今後の展望
イナリスは、各自治体によって異なる農地管理の状況に柔軟に対応できるよう、導入前に丁寧なヒアリングと準備期間を設けて導入を進めています。導入を検討している自治体や団体は、まずは気軽にWebサイトのお問い合わせフォームから問い合わせてみることをおすすめします。
株式会社デジオンについて
イナリスを提供する株式会社デジオンは、「新たな技術で、まだ見ぬ体験を、誰よりも早く」という企業理念のもと、ネットワーク、マルチメディア、セキュリティ、そして衛星・宇宙といった多岐にわたる分野で、独自のソフトウェア研究開発を中心とした事業を展開しています。同社の自社ブランド「DiXiM(ディクシム)」は、安心・安全なスマートライフを支える基盤技術として、国内外の多くの家電メーカーや機器メーカーに採用されています。1999年に設立されたデジオンは、福岡本社と東京オフィスを拠点に、誰もが先端技術の恩恵を享受できる未来を目指し、挑戦を続けている企業です。
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株式会社デジオン公式サイト: https://www.digion.com
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衛星・宇宙事業ページ: https://www.digion.com/business/space/
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農地情報調査支援サービス「イナリス(TM) powered by DiXiM Imaging AI」製品サイト: https://www.digion.com/product/inaris/
まとめ:スマート農業の未来を切り拓く「イナリス」
農地調査支援サービス「イナリス」は、生成AIによる衛星画像の超解像化技術と、衛星データ解析を組み合わせることで、農地調査業務に革命をもたらす画期的なサービスです。福岡県飯塚市での実証では、作業時間の81%削減、現地調査の約6割省略、職員の心理的負担の52%軽減という、目覚ましい成果を達成しました。
このサービスは、農地管理の効率化だけでなく、農業従事者の負担軽減、さらには各種交付金の適正な運用にも貢献し、日本のスマート農業の推進に不可欠な存在となるでしょう。イナリスの登場は、デジタル技術が農業の未来をどのように変えていくかを示す、具体的な事例として、今後の展開が注目されます。AI初心者の方も、この技術が私たちの生活や社会に与えるポジティブな影響を感じ取っていただけたのではないでしょうか。農業DXのさらなる加速と、持続可能な農業の実現に向けたイナリスの貢献に、大いに期待が寄せられます。

