レゾナック、AI画像解析で製造現場のDXを加速!ニューロダイバーシティ人材が実現した驚異の精度約4割改善とは?

レゾナックが拓くAIと多様性の新時代

株式会社レゾナックは、材料検査の分野でAI(人工知能)を活用した画像解析技術を導入し、製造現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に推進しています。このたび、同社が発表したのは、AIと多様な個性を持つ人材の融合によって、検査精度を大幅に改善したという画期的な成果です。

具体的には、ディープラーニングというAI技術を用いた画像解析において、その性能を左右する「教師データ」の作成を、社内の専門チームが担当。その結果、同社の主力製品の一つである球状アルミナの画像検査において、AIによる誤検出率を従来の40.8%からわずか3.2%にまで低下させ、解析精度を約4割も向上させることに成功しました。

この成果は、単に技術的な進歩にとどまらず、脳や神経の特性に由来する多様な認知特性を持つ「ニューロダイバーシティ人材」の可能性を最大限に引き出した、インクルーシブな働き方のモデルケースとしても注目されています。

AI画像解析の核心:ディープラーニングと教師データの重要性

AIによる画像解析は、製造業における品質管理や検査の自動化において、非常に大きな期待が寄せられている技術です。特に、レゾナックが導入している「ディープラーニング」は、AIの中でも特に高度な学習能力を持つ技術として知られています。

ディープラーニングとは?

ディープラーニングは、人間の脳の神経回路を模倣した「ニューラルネットワーク」を多層に重ねることで、コンピューターが自らデータから特徴を学習し、判断を下すことを可能にする技術です。例えば、画像の中から特定の物体を識別したり、異常を検知したりする際に、人間が細かなルールを教え込まなくても、大量の画像を見ることでAIが自動的に「これは正常な状態」「これは異常な状態」といった判断基準を学習していきます。

この技術の大きな利点は、従来は人間が何時間もかけて行っていた複雑な検査作業を、AIが高速かつ客観的に実行できるようになる点です。これにより、検査時間の短縮はもちろん、人間による見落としや判断のばらつきを減らし、品質の安定化に貢献します。

AIが賢くなるための「教師データ」

ディープラーニングがその能力を最大限に発揮するためには、「教師データ」と呼ばれる、あらかじめ正解が与えられた学習用データが不可欠です。AIは、この教師データを使って「これはAである」「これはBである」というように、正解を繰り返し学ぶことで、未知のデータに対しても正確な判断ができるようになります。

例えば、材料検査の画像解析であれば、「この部分が不良品を示す」「この粒子は正常な形状である」といった情報を、画像に一つ一つマーク付けしたものが教師データとなります。AIは、このマーク付けされた画像と正解の情報をセットで学習することで、次に新しい画像が入力されたときに、自力で不良箇所を特定できるようになるのです。

教師データ作成の難しさ

しかし、この教師データの作成は非常に専門的で、手間のかかる作業です。なぜなら、AIの解析精度は、教師データの品質に大きく左右されるからです。わずかな誤りや不正確な情報が含まれているだけでも、AIが間違ったことを学んでしまい、結果として解析精度が大きく低下してしまいます。

特に、今回のような材料の微細な粒子を画像解析する場合、ピクセルレベルで正確に、粒子一つ一つを手作業で色分けするなど、非常に高度な集中力と根気を要する作業となります。また、学習に必要なデータの量は膨大であるため、人手不足が大きな課題となっていました。このような背景から、いかに高品質な教師データを効率的に作成するかが、AI画像解析導入の鍵となっていたのです。

教師データ作成作業の様子

ニューロダイバーシティ人材がもたらす革新:ジョブ・サポートチームの挑戦

レゾナックがこの教師データ作成の課題を解決するために、その能力を最大限に引き出したのが、社内の「ジョブ・サポートチーム」です。このチームは、同社が推進する「ニューロダイバーシティ」という考え方に基づき、多様な個性を持つ人材によって構成されています。

ニューロダイバーシティ人材とは?

「ニューロダイバーシティ人材」とは、脳や神経の特性に由来する多様な認知特性や能力を持つ人々を指す言葉です。これは、発達障がい、精神障がい、知的障がいといったカテゴリーに含まれる人々を、従来の「不足」や「障がい」として捉えるのではなく、「人間の多様な個性の一つ」として肯定的に捉える概念に基づいています。

例えば、特定の情報処理に非常に長けていたり、高い集中力を持っていたり、細部へのこだわりが強かったりといった特性は、特定の業務において大きな強みとなり得ます。レゾナックは、このような多様な個性を企業の力に変えることを目指し、ジョブ・サポートチームを立ち上げました。

ジョブ・サポートチームの活躍

今回、計算情報科学研究センターの画像解析専任チームと連携し、ジョブ・サポートチームが教師データ作成を担当しました。この作業は、前述の通り、非常に細かく、高い集中力と正確さが求められます。まさに、ニューロダイバーシティ人材が持つ「丁寧さ」や「集中力」といった特性が、この業務内容と非常に高い親和性を示しました。

チームメンバーは、画像中の微細な粒子を一つ一つ手作業で正確に色分けする作業を迅速かつ正確に進め、高品質な教師データを内製化することに成功しました。この内製化は、単に作業を外部に委託するだけでなく、教師データ作成に関するノウハウを社内に蓄積できるという大きなメリットも生み出しました。これにより、レゾナックは継続的に高品質な教師データを供給できる体制を構築し、AI解析技術のさらなる発展の基盤を築いたのです。

ジョブ・サポートチームのメンバーは、この取り組みについて「当社の品質向上や企業の信用に関わる仕事に責任を持って取り組んでいます。なにより、レゾナックの一員であることを誇りに思っています。」とコメントしており、自身の仕事が会社の重要な部分を担っていることへのやりがいと誇りを感じていることが伺えます。

驚異的な精度向上:球状アルミナ検査における具体的な成果

ジョブ・サポートチームが作成した高品質な教師データは、レゾナックの子会社である株式会社レゾナック・セラミックス富山工場で製造されている「球状アルミナ」の画像解析に適用されました。

球状アルミナとは?

球状アルミナは、アルミナを原料とし、高温の火炎中で溶融させることで球形にした材料です。直径が数マイクロメートル(㎛)から90マイクロメートル(㎛)という非常に微細な粒子で、熱伝導性、流動性、充填性に優れているという特性を持っています。これらの優れた特性から、主に電子部品向けの放熱シートの充填材など、様々な先端材料として幅広く使用されています。

誤検出率の大幅な改善

この球状アルミナの画像検査において、ジョブ・サポートチームが作成した教師データで学習させたAIモデルは、従来のモデルと比較して驚くべき成果を出しました。なんと、AI画像解析での誤検出率が従来の40.8%からわずか3.2%へと大幅に低下したのです。これは、解析精度が約4割も改善したことを意味します。

教師データによる改善効果の比較

元画像と教師データの比較

この大幅な精度向上は、次の解析ステップである、アルミナ粒子のOK/NG判定精度のさらなる向上に直結します。AIがより正確に不良品を検知できるようになることで、最終製品の品質保証が強化されるだけでなく、製造工程における無駄を削減し、生産効率を高めることが期待されます。将来的には、この解析結果を製造条件にフィードバックすることで、生産性全体の向上にも大きく貢献するでしょう。

レゾナックが推進するインクルーシブな社会:多様な人材が輝く環境づくり

今回の成果は、レゾナックが長年にわたって取り組んできた「多様な人材が安心して活躍できる環境づくり」という企業理念の具現化でもあります。同社は、障がい者インクルージョン(多様な人々が社会に参加し、貢献できるような環境を整えること)を非常に重視しています。

レゾナックの障がい者インクルージョンへの取り組みは、2013年にダイバーシティプロジェクトの中で、知的・精神・発達障がい者の雇用ノウハウを蓄積し、事業所やグループ会社に展開していくことを目的とする推進チームを発足したことから始まりました。この取り組みは着実に進展し、2015年には障がいのある社員を中心とした、障がい者雇用・育成・定着を推進する専門部署として「ジョブ・サポートチーム」が正式に発足しました。

発足当初、ジョブ・サポートチームは、社内メール便の集配や会議室の整備といった業務を担当していましたが、その業務範囲は年々拡大してきました。近年では、各部門からの依頼を受け、年間70本以上の社内向けe-learningコンテンツ制作支援を担当するなど、レゾナックグループ全体の知識共有と人材育成に大きく貢献しています。

これらの実績を基盤として、ジョブ・サポートチームは、今回のような高付加価値業務であるAIの教師データ作成といった新たな業務領域へも挑戦を進めています。これは、同社が掲げる障がい者インクルージョン推進のスローガン「オンリーワンの個性を、チカラに変える」をまさに体現するものです。

レゾナックは、自動化・効率化を通じた製品の品質革新と、多様な人材の活躍による企業価値向上を両立させることで、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

レゾナックのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに関する詳細はこちらをご覧ください。

まとめ:AIと多様性の融合が切り拓く未来

レゾナックの今回の発表は、AI技術の進化が製造業のDXを加速させるだけでなく、多様な人材の能力を最大限に引き出すインクルーシブな職場環境が、その技術革新をさらに推し進めるという、未来志向のモデルを示しています。

ディープラーニングと高品質な教師データ、そしてニューロダイバーシティ人材の持つ独自の強みが融合することで、材料検査の精度は飛躍的に向上し、製造現場の生産性向上に大きく貢献することが期待されます。これは、技術と人間性の両面から、より良い社会と産業を築いていくための重要な一歩と言えるでしょう。

レゾナックのこの取り組みは、他の企業にとっても、AI導入と多様性推進のあり方について示唆を与えるものとなるはずです。今後も、AIと多様性が織りなす新たな価値創造に注目が集まります。

タイトルとURLをコピーしました