AIが安全運転をサポート!ティーティスと奈良先端科学技術大学院大学の共同研究論文が国際会議「IJCNLP-AACL 2025」に採択

AIが安全運転をサポート!ティーティスと奈良先端科学技術大学院大学の共同研究論文が国際会議「IJCNLP-AACL 2025」に採択

AI(人工知能)技術の進化は目覚ましく、私たちの生活のさまざまな側面に影響を与えています。特に、安全運転支援の分野では、AIが事故の削減や効率的な運転指導に貢献する可能性を秘めています。この度、ティーティス合同会社と奈良先端科学技術大学院大学の共同研究による論文が、自然言語処理分野の権威ある国際会議「IJCNLP-AACL 2025」併設ワークショップ「MMLoSo 2025 Workshop」に採択されました。この採択は、AIを活用した安全運転支援技術の発展において、非常に重要な一歩となります。

自然言語処理国際会議「IJCNLP-AACL 2025」併設ワークショップ「MMLoSo 2025 Workshop」に採択

国際会議「IJCNLP-AACL 2025」とワークショップ「MMLoSo 2025」とは?

まず、今回の採択がいかに注目すべきことなのかを理解するために、関連する国際会議について詳しく見ていきましょう。

「International Joint Conference on Natural Language Processing & Asia-Pacific Chapter of the Association for Computational Linguistics(IJCNLP-AACL)」は、自然言語処理(Natural Language Processing、略してNLP)分野における世界的に見ても非常に難易度の高い国際会議の一つです。自然言語処理とは、人間が日常的に使っている言葉(自然言語)をコンピューターに理解させたり、生成させたりするAI技術の総称です。例えば、スマートフォンの音声アシスタントや翻訳アプリ、チャットボットなどがこの技術によって動いています。

このIJCNLP-AACL 2025に併設されるワークショップの一つが「MMLoSo 2025: Multimodal Learning on Sound and Vision」です。このワークショップは、「マルチモーダル学習」という特定のAI研究分野に焦点を当てています。マルチモーダル学習とは、テキストだけでなく、画像や音声、動画といった複数の種類の情報を組み合わせてAIが学習する技術のことです。例えば、単に「犬」という文字情報だけでなく、犬の画像や鳴き声も一緒に学習することで、より深く「犬」という概念を理解できるようになります。自動運転のように、視覚情報(道路の状況、他の車両、ドライバーの動き)と、将来的には音声情報(緊急車両のサイレン、車内の会話など)も同時に処理する必要がある分野では、このマルチモーダル学習が非常に重要になります。

このような権威ある国際会議のワークショップに論文が採択されたことは、ティーティスと奈良先端科学技術大学院大学の共同研究が、自然言語処理とマルチモーダル学習の最先端を行く画期的なものとして、国際的に認められたことを意味します。この研究成果は、2025年12月23日にインド・ムンバイで開催される会議で発表される予定です。

会議の詳細については、以下の学会URLをご参照ください。
https://2025.aaclnet.org/

採択された共同研究論文の概要

今回採択された論文のタイトルは、”Toward Automatic Safe Driving Instruction: A Large-Scale Vision Language Model Approach” です。これを日本語にすると、「自動安全運転指導の実現に向けて:大規模視覚言語モデルによるアプローチ」となります。このタイトルが示す通り、この研究の核心は、AIが自動で安全運転の指導を行う技術の開発とその可能性を探ることにあります。

「自動運転指導生成」とは?

「自動運転指導生成」とは、AIがドライバーの運転状況をリアルタイムで分析し、より安全で効率的な運転を促すための具体的な指示やアドバイスを自動で作り出す技術です。例えば、「前の車との車間距離が近すぎます。もう少し余裕を持ちましょう」といった具体的なメッセージを、AIが状況に応じてドライバーに提供するイメージです。これは、単に危険を警告するだけでなく、ドライバーの運転スキル向上にも寄与することが期待されます。特に、物流事業者など、多くの車両を運用する企業にとっては、ドライバー一人ひとりの安全意識向上と事故削減に直結する重要な技術となり得ます。

大規模視覚言語モデル(LVLM)とは?

この研究で重要な役割を果たすのが「大規模視覚言語モデル(Large-Scale Vision Language Model、略してLVLM)」です。AI初心者の方のために、少し詳しく説明しましょう。

近年、ChatGPTに代表される「大規模言語モデル(LLM)」というAIが注目されています。これは、大量のテキストデータを学習することで、人間のように自然な文章を理解したり、生成したりできるAIです。一方、画像認識や物体検出に特化したAIも進化してきました。

LVLMは、これらLLMの能力と画像認識の能力を組み合わせた、より高度なAIです。つまり、テキスト情報だけでなく、画像や動画といった視覚情報も同時に理解し、それらを関連付けて処理できるモデルを指します。例えば、LVLMはドライブレコーダーの映像を見て、それが「雨の日の交差点で、歩行者が信号を渡ろうとしている」といった状況を視覚的に理解し、さらにその状況を「滑りやすい路面なので、いつもより早めにブレーキを踏み始めましょう」といったテキストで説明したり、具体的な指示を生成したりできます。このように、複数の種類の情報を統合的に処理できる点が、LVLMの大きな特徴であり、自動運転指導のような複雑なタスクには不可欠な技術となっています。

研究の背景と目的

LVLMは、物体検出や画像の内容説明など、視覚情報を伴うタスクにおいて近年急速な進歩を遂げています。この進歩により、ドライブレコーダーの映像から道路状況を自動で要約したり、潜在的なリスクを検知したりするAIへの応用が期待されるようになりました。

しかし、実際の安全運転評価システムを実用化するには、まだいくつかの課題がありました。特に、車両の「前方カメラ」が捉える外部の道路状況だけでなく、「車内カメラ」が捉えるドライバー自身の状態(脇見運転、スマホ操作、居眠りなど)を総合的に理解する仕組みが不可欠です。外部の状況とドライバーの行動は密接に関連しており、これらを同時に分析することで、より精度の高い安全運転指導が可能になります。

この背景を踏まえ、本研究では以下の点に取り組みました。

  1. 前方・車内 2つの映像入力を統合するLVLMモデルの構築
    これは非常に技術的な挑戦です。前方カメラと車内カメラでは、撮影される対象や画角、情報の内容が大きく異なります。これら異なる種類の映像データをAIが統合的に理解し、関連付けて分析できるようなLVLMモデルを開発しました。これにより、例えば「前方の交差点で歩行者が急に飛び出してきた」という外部情報と、「その時ドライバーがスマートフォンを操作していた」という内部情報を結びつけ、より的確な状況判断と指導生成が可能になります。

  2. 映像からリスク行動(例:スマホ操作)を検知する能力の評価
    ドライバーの具体的なリスク行動(スマートフォンの操作、居眠り、飲酒、脇見など)を映像から正確に検知するAIの能力を評価しました。これらの行動は、わずかな視線の動きや手の動きで判断する必要があり、AIにとって高度な認識能力が求められます。

  3. 大規模データセットの構築と、既存LVLMの性能比較
    AIが賢くなるためには、大量の質の高いデータが必要です。本研究では、多様な運転状況とドライバーのリスク行動を含む大規模なデータセットを独自に構築しました。このデータセットを用いて、既存のLVLMがどの程度の性能を発揮できるのかを詳細に比較・評価しました。これにより、現在のAI技術の限界と強みを明確に把握することができました。

  4. ファインチューニングによる性能改善の実証
    「ファインチューニング」とは、既存の学習済みAIモデルに対して、特定のタスク(今回の場合は安全運転指導)に特化した追加学習を行わせ、性能を向上させる手法です。本研究では、一般的なLVLMを安全運転指導のタスクに特化させてファインチューニングすることで、その性能がどれほど改善されるかを検証しました。これは、汎用的なAIを特定の用途で最大限に活用するための重要なステップです。

研究成果の詳細

評価実験の結果、いくつかの重要な知見が得られました。

まず、事前学習済みのLVLM、つまりファインチューニングを行う前の汎用的なLVLMは、安全運転指導の生成において限定的な性能しか示しませんでした。これは、汎用モデルでは、安全運転に関する具体的な知識や、複雑な状況判断のニュアンスを十分に捉えきれなかったためと考えられます。例えば、「危険です」といった一般的な警告はできても、「右折時は巻き込みに注意し、一時停止で左右確認を徹底しましょう」といった具体的な指示を生成するのは難しかったということです。

しかし、この研究でファインチューニングを施したLVLMは、高精度な安全運転指示を生成できることが明らかになりました。これは、特定の安全運転シナリオやリスク行動に関する豊富なデータを追加学習させることで、AIがその分野の専門知識を習得し、より具体的で的確なアドバイスを提供できるようになったことを示しています。例えば、ファインチューニング後のLVLMは、「夜間の見通しの悪い交差点では、ライトを上向きにして歩行者の有無を確認しましょう」といった、より実践的な指導を生成することが可能になったと考えられます。

一方で、微小な動作(例えば、一瞬の視線移動)や、複数の要素が絡み合う複雑なリスク行動(例えば、疲労による集中力低下と、それに伴う車線逸脱の兆候)に対しては、依然として課題が残ることも確認されました。これは、人間の行動の多様性や、状況の微妙な変化をAIが完全に捉えきるには、さらなる技術的改良が必要であることを示唆しています。この知見は、今後の研究開発において、どのような点に注力すべきかを明確にする貴重な情報を提供しています。

この研究成果は、将来の安全運転支援システムや、特に物流事業者向けの運転指導AIへの応用に向けた重要な一歩となります。事故の削減、運転効率の向上、そしてドライバーの安全意識の底上げに大きく貢献する可能性を秘めています。

論文の詳細については、以下の論文URLをご参照ください。
https://arxiv.org/abs/2511.23311

今後の展望

ティーティス合同会社と奈良先端科学技術大学院大学は、今回の研究成果を基盤として、AIを活用した安全運転支援のさらなる高度化に向けて共同研究を継続していく予定です。

今後の具体的な取り組みとしては、以下の点が挙げられています。

  • さらなるLVLMの高精度化・軽量化
    AIモデルの性能をさらに向上させるとともに、より少ない計算資源で動作するように軽量化を進めます。これにより、スマートフォンや車載機器など、限られた環境でもAIがスムーズに動作し、リアルタイムでの利用が可能になります。

  • 現場運用を前提としたリアルタイム推論パイプラインの開発
    実際の運転現場でAIが遅延なく機能するためには、映像の取り込みから分析、指導生成までの一連の流れを、瞬時に処理できるシステム(リアルタイム推論パイプライン)が必要です。この開発を通じて、即座にドライバーへフィードバックできる環境の構築を目指します。

  • 高リスク行動の細粒度ラベリングデータセットの拡充
    前述の通り、微細な動作や複雑なリスク行動の検知にはまだ課題が残っています。これを解決するために、より詳細な情報(例えば、視線の動きのパターン、特定の操作ミスなど)がタグ付けされた高品質なデータセットをさらに拡充していきます。データが豊富であればあるほど、AIはより賢く、より正確な判断ができるようになります。

  • ドラレコあとづけAI「アクレス」への応用
    ティーティス合同会社が開発・提供しているAI映像分析サービス「アクレス」は、既存のドライブレコーダーにAI機能を後付けできるソリューションです。今回の研究成果は、この「アクレス」の機能向上に直接応用される予定です。これにより、「アクレス」は単なる記録装置としてだけでなく、高度な安全運転指導AIとしての役割も担うことになり、既存の多くの車両に手軽に先進の安全運転支援機能が提供されることになります。

これらの取り組みを通じて、両者は安全運転支援技術をさらに発展させ、交通事故の削減や社会全体の安全向上に貢献することを目指しています。

ティーティス合同会社の詳細については、以下の企業URLをご参照ください。
https://www.teatis.jp/

まとめ

ティーティス合同会社と奈良先端科学技術大学院大学の共同研究は、大規模視覚言語モデル(LVLM)を活用し、「自動運転指導生成」という革新的な技術の実現に向けた大きな一歩を踏み出しました。国際会議への採択は、この研究が世界レベルで認められた証であり、AIが私たちの安全な未来を築く上でどれほど重要であるかを示しています。

AI初心者の方にもご理解いただけたでしょうか。この研究は、AIが単なる技術的な進歩に留まらず、私たちの日常生活における「安全」という価値を向上させる具体的なソリューションを提供しようとしていることを示しています。今後、この技術がさらに発展し、多くのドライバーの安全を支える存在となることが期待されます。特に、物流業界のようなプロのドライバーが活躍する場では、事故防止、コスト削減、そして企業全体の信頼性向上に大きく貢献するでしょう。

未来の運転は、AIの力でさらに安全で快適なものへと進化していくに違いありません。この共同研究の今後の進展に、ぜひご注目ください。

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