AI時代の自動運転開発を加速!ローデ・シュワルツとIPG Automotiveが車載レーダーHIL統合テストでパートナーシップ強化

ローデ・シュワルツとIPG Automotive、自動運転車載レーダーのHIL統合テストでパートナーシップ強化

2025年12月19日、グローバルに展開する技術指向のグループであるローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社と、バーチャルテスト・ドライビングのリーダーであるIPG Automotive株式会社は、日本の自動車業界向けソリューション強化の一環としてパートナーシップを強化すると発表しました。この提携は、自動運転(AD)車載レーダーのハードウェア・イン・ザ・ループ(HIL)統合テストを、従来の試験場のみで実施していたものから開発ラボへ移行させることを目的としています。この革新的なアプローチにより、自動車メーカーやTier 1サプライヤーは、自動運転システムの開発において時間とコストを大幅に削減できると期待されています。

自動運転技術の進化とテストの重要性:なぜ今、バーチャルテストが不可欠なのか?

自動運転(AD)および先進運転支援システム(ADAS)は、自動車産業において最も急速に進展している分野の一つです。これらの技術は、ドライバーの安全性向上や交通効率の改善に大きく貢献すると期待されています。しかし、その一方で、システムが複雑化するにつれて、その安全性と信頼性を確保するためのテストはますます困難になっています。

従来の自動車開発では、試作車を製作し、実際の試験場や公道で走行テストを繰り返すのが一般的でした。しかし、自動運転システムの場合、予測不可能な状況や稀にしか発生しない危険なシナリオも網羅的にテストする必要があります。これらすべてを実車でテストしようとすると、膨大な時間、コスト、そして安全上のリスクが伴います。例えば、数百万キロメートルもの走行距離をカバーする必要があると言われており、現実的な方法ではありません。

こうした背景から、近年注目されているのが「バーチャルテスト」です。バーチャルテストは、コンピューターシミュレーションを用いて仮想空間で車両や環境を再現し、さまざまなシナリオを効率的かつ安全に検証する手法です。これにより、開発の初期段階からシステムの不具合を発見し、修正することが可能になります。しかし、バーチャルテストだけでは、実際のハードウェアの性能や、ソフトウェアとハードウェア間の連携を完全に評価することはできません。そこで登場するのが、HILテストの重要性です。

HIL(Hardware-in-the-Loop)テストとは?開発ラボでの統合テストがもたらす革新

HIL(Hardware-in-the-Loop)テストとは、「ハードウェア・イン・ザ・ループ」の略で、実際のハードウェア(物理的な部品や装置)をテスト対象としつつ、そのハードウェアが動作するであろう仮想的な環境をコンピューターシミュレーションで再現して連携させるテスト手法です。AI初心者の方にも分かりやすく言うと、まるでゲームの世界に本物のコントローラーをつないで遊ぶようなイメージです。

自動運転車の開発におけるHILテストでは、例えば、車載レーダーやカメラといった実際のセンサーをテスト対象とし、車両の動き、周囲の交通状況、歩行者の動き、天候など、実際の運転環境をシミュレーションソフトウェアで作り出します。そして、シミュレーションが生成した仮想的な信号を、実際のセンサーに入力し、そのセンサーがどのように反応するか、その反応がシステム全体にどのように影響するかを評価します。

HILテストの主なメリット

HILテストを開発ラボで実施できるようになることで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 開発サイクルの短縮: 実際の試験場でのテストは、準備や移動に時間がかかりますが、ラボ内でのHILテストは、場所や天候に左右されず、いつでも繰り返し実施できます。これにより、開発のイテレーション(繰り返し)を高速化し、全体的な開発期間を大幅に短縮できます。

  • コスト削減: 試作車や試験場の利用にかかる費用、燃料費、人件費などを抑制できます。特に、高価な自動運転車の試作コストを考えると、HILテストによるコスト削減効果は非常に大きいです。

  • 安全性の向上: 実際の道路では再現が難しい、あるいは危険を伴うような極端なシナリオ(例:突然の飛び出し、視界不良時の緊急ブレーキなど)も、仮想環境で安全に繰り返しテストできます。これにより、システムの安全性を徹底的に検証し、潜在的なリスクを早期に発見・対処できます。

  • 再現性の高さ: 同じテストシナリオを何度でも正確に再現できるため、システムの挙動の変化を詳細に分析し、デバッグ作業を効率的に進めることができます。

今回のローデ・シュワルツとIPG Automotiveのパートナーシップ強化は、このHIL統合テストを、これまで試験場でしか実施できなかった高度なレベルで、開発ラボ内へと持ち込むことを可能にするものです。これにより、自動車開発の効率性と安全性が飛躍的に向上することが期待されます。

ローデ・シュワルツとIPG Automotiveの強力な組み合わせが実現するバーチャルテスト環境

今回のパートナーシップ強化の核となるのは、IPG Automotive社のCarMakerシミュレーション・ソフトウェアと、ローデ・シュワルツ社の先進的なテスト機器の組み合わせです。

IPG Automotive社のCarMakerシミュレーション・ソフトウェア

IPG Automotive社は、バーチャルテスト・ドライビングの分野で世界的に知られるリーダー企業です。同社の主力製品であるCarMakerは、車両、ドライバー、交通状況、環境など、自動運転に必要なあらゆる要素を仮想空間でリアルに再現できる高性能なシミュレーションソフトウェアです。このソフトウェアを用いることで、例えば、自動車が交差点を曲がる際の他の車両の動きや、歩行者が横断歩道を渡るタイミング、さらには雨や霧といった天候条件まで、複雑な運転シナリオを詳細にシミュレートできます。

CarMakerは、自動運転システムの「目」となるレーダーが、仮想空間で作り出された周囲の状況をどのように認識し、そのデータがどのように処理されるかを評価するための基盤を提供します。

ローデ・シュワルツ社の先進テスト機器

IPG Automotive社のCarMakerと連携するのは、ローデ・シュワルツ社が提供する以下の先進的なテスト機器です。

  • R&S AREG800A車載用レーダーエコー発生器: この装置は、自動車のレーダーセンサーが発した電波が、周囲の物体(他の車、歩行者、障害物など)に反射して戻ってくる「エコー」を仮想的に作り出すことができます。これにより、実際の物体がレーダーの視野内にあるかのようにセンサーを「だまし」、その反応をテストします。

  • R&S QAT100アドバンスドアンテナアレイ: 複数のアンテナを精密に制御することで、レーダー信号の送受信をより高度にシミュレートする装置です。これにより、レーダーが複数のターゲットを同時に識別したり、異なる方向からの信号を正確に捉えたりする能力を評価できます。

  • R&S RadEsTレーダー・ターゲット・シミュレータ: コンパクトながら、実際のレーダーターゲット(例えば、別の車両や道路上の障害物)の動きやレーダー反射特性をリアルに再現できるシミュレータです。これにより、限られたスペースの開発ラボでも、多様な交通シナリオをテストすることが可能になります。

これらのローデ・シュワルツ社の機器とCarMakerが連携することで、自動運転システムの「脳」と「目」を同時に、かつ高精度でテストできるHIL統合テスト環境が構築されます。これにより、自動車メーカーやTier 1サプライヤーは、Euro NCAP(欧州の自動車安全評価プログラム)で定義されているような、高度なADAS/ADシナリオのシミュレーションと検証を、開発ラボで効率的に実施できるようになります。

日本の自動車産業への貢献と両社の展望

このパートナーシップ強化は、日本の自動車産業に大きなメリットをもたらすことが期待されています。ローデ・シュワルツ・ジャパンの大崎オフィス設備が拡張されたことで、ローデ・シュワルツのテスト機器とIPG AutomotiveのCarMakerソフトウェアを用いたHILシステムの共同セットアップとデモンストレーションが可能になりました。これにより、日本のお客様は、実際のニーズに応じた交通シナリオシミュレーションの開発環境を整えることができます。

IPG Automotive株式会社の代表取締役社長である清水圭介氏は、「ローデ・シュワルツ・ジャパンの大崎オフィス設備が拡張されたことにより、ローデ・シュワルツのテスト機器とIPG AutomotiveのCarMakerソフトウェアを用いたHILシステムの共同セットアップとデモンストレーション、そして日本のお客様のニーズにお応えする交通シナリオシミュレーションの開発のための環境を整えることができました」と述べています。

また、ローデ・シュワルツ・ジャパンのT&M事業本部営業部長である菅原則和氏は、「国内の自動車業界の方々に、IPG Automotive社と弊社製品の組み合わせによる、自動運転車載レーダーのHILテストシステムを活用して頂くことで、製品開発を加速させるための一助となれば幸いです」と、日本の自動車開発への貢献に期待を寄せています。

このパートナーシップは、日本の自動車メーカーが、より安全で信頼性の高い自動運転車を、より迅速かつ効率的に市場に投入するための強力な支援となるでしょう。AI技術が自動車に深く組み込まれる現代において、このような先進的なテストソリューションは、技術革新を支える重要な基盤となります。

ローデ・シュワルツについて

ローデ・シュワルツは、電子計測、技術システム、ネットワークおよびサイバーセキュリティの各部門を通じて、より安全に「つながる」社会の実現に貢献しています。90年以上にわたり、最先端技術の開発を続け、技術の限界を押し広げてきました。同社の最新製品やソリューションは、産業界、規制当局、行政機関のお客様がデジタル技術の主権を得るためのお力添えをしています。

ドイツ・ミュンヘンを拠点としたプライベートな独立企業であり、長期的かつ持続的な経営を行える体制を構築しています。2024/2025会計年度(昨年7月から本年6月まで)には31.6億ユーロの純収益を上げ、2025年6月30日現在、約15,000名の従業員が全世界で活躍しています。

詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。

IPG Automotive社について

IPG Automotive社は、バーチャル・テスト・ドライビング技術の世界的なリーダーとして、車両開発のための革新的なシミュレーションソリューションを開発しています。同社のソフトウェアとハードウェア製品は、概念実証(Proof-of-Concept)から検証、リリースまで、すべての開発プロセス全体を通じて活用できます。IPG Automotive社のバーチャルプロトタイピング技術は、自動車システムズエンジニアリングアプローチを促進し、すべてのエンジニアがバーチャル車両全体で新しいシステムの開発、テスト、検証を行うことを可能にします。

IPG Automotive株式会社は、ドイツIPG Automotive GmbHの日本法人として2014年に設立されました。日本での自動車開発用シミュレーション・ソフトウェアの販売とそれに関連するエンジニアリングのサポートを行っています。

詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。

まとめ:自動運転の未来を拓くHIL統合テスト

ローデ・シュワルツとIPG Automotiveのパートナーシップ強化は、自動運転技術の開発において重要な一歩となります。両社の専門知識と技術が融合することで、自動運転車載レーダーのHIL統合テストが開発ラボで実現し、これまで課題であった開発の時間とコストを大幅に削減できるようになります。これにより、自動車メーカーは、より迅速に、より安全で信頼性の高い自動運転システムを開発し、市場に投入することが可能になります。AIが駆動する未来のモビリティ社会の実現に向けて、この先進的なバーチャルテスト環境が果たす役割は計り知れないでしょう。

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