TOPPANが熊本城で次世代AI同時通訳を実証!LLMで実現する多言語コミュニケーションの未来とは?
近年、AI(人工知能)技術の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスに大きな変化をもたらしています。特に「大規模言語モデル(LLM)」と呼ばれるAIは、人間が話すような自然な言葉を理解し、生成する能力を持つことで、さまざまな分野での応用が期待されています。
そんな中、TOPPAN株式会社は、このLLMを活用した次世代の自動同時通訳システムの実証実験を、熊本城ミュージアム「わくわく座」で実施しました。この実験は、多言語コミュニケーションの質を飛躍的に向上させ、観光やビジネスにおける新たな可能性を拓くものとして注目されています。本記事では、AI初心者の方にもわかりやすい言葉で、この画期的なシステムと、それがもたらす未来について詳しくご紹介します。
大規模言語モデル(LLM)とは?
「大規模言語モデル(LLM)」という言葉を最近よく耳にするかもしれませんが、具体的にどのようなものかご存知でしょうか?簡単に言うと、LLMは、インターネット上の膨大なテキストデータ(書籍、記事、ウェブサイトなど)を学習することで、人間のような言葉の理解力と生成能力を身につけたAIのことです。
従来の機械翻訳システムは、事前に決められたルールや統計的なパターンに基づいて翻訳を行っていました。しかし、LLMは単語やフレーズだけでなく、文全体の文脈や背景を深く理解することができます。これにより、より自然で、まるで人間が翻訳したかのような、きめ細やかな翻訳が可能になります。
例えば、同じ単語でも文脈によって意味が変わることがありますが、LLMはそうしたニュアンスの違いを捉え、適切な翻訳を導き出せるのが大きな強みです。また、ユーザーの指示に応じて表現を調整するといった柔軟性も持ち合わせています。このLLMの登場により、自動翻訳の精度はこれまでの常識を覆すレベルにまで進化しているのです。
次世代自動同時通訳システム「LiveTra®」の進化
TOPPANはこれまでも、自動同時通訳システム「LiveTra®」を提供し、大阪・関西万博などでの活用を通じて、イベントやセミナーでの多言語対応に貢献してきました。「LiveTra®」は、話者の言葉をリアルタイムで通訳し、スクリーンやディスプレイに字幕として表示できるシステムです。
今回の実証実験では、この「LiveTra®」の基盤となる自動同時通訳エンジンを、従来の機械翻訳方式からLLMを用いた方式へと進化させました。この「次世代自動同時通訳システム」は、LLMの持つ高度な言語理解能力と生成能力を最大限に活用することで、以下のようなメリットが期待されています。
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文脈を理解した翻訳: LLMは単語一つ一つではなく、話されている内容全体の流れや背景を把握するため、より自然で適切な翻訳が可能になります。
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表現の自然さ: 人間が話すような滑らかで違和感のない表現で翻訳されるため、聴衆は内容をより深く理解しやすくなります。
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ユーザー指示による調整: 特定の専門用語を優先したり、表現のトーンを調整したりするなど、利用者のニーズに合わせて翻訳結果を細かく設定できるようになります。
これらの進化は、国際的なコミュニケーションの質を大きく向上させ、言語の壁を感じさせないスムーズな交流を実現する可能性を秘めています。
熊本城ミュージアム「わくわく座」での実証実験
今回の実証実験は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の事業の一環として、熊本城ミュージアム「わくわく座」で実施されました。この実験は、NICT製の国産LLMを用いた自動同時通訳システムによる、同時多人数(1対N)への自動同時通訳としては日本初の試みです。
実証実験の概要
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目的: 国産LLMを活用した次世代自動同時通訳システムの有用性を検証すること。
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場所: 熊本城ミュージアム「わくわく座」2階ものがたり御殿の舞台横の字幕スクリーン。
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期間: 2025年11月23日(日)から2025年12月22日(月)まで不定期で実施されました。来場者からの評価が高かったため、2026年2月27日まで稼働が延長されています。
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対応言語: 英語、中国語(繁体字)、韓国語の3言語に対応し、来場者の母国語に合わせて複数言語を同時に字幕表示。
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実証演目: 「熊本城VRガイド」のセリフやナレーション。
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検証項目: 体験価値や理解度向上への貢献度、内容の質と表現の適切性、字幕のタイミング(表示速度)、他施設展開への期待などが、体験者へのアンケートを通じて把握されました。

確認された結果
実証実験の結果、各言語において翻訳精度が高く評価され、来場者の理解度や体験価値の向上に大きく貢献することが確認されました。字幕の表示速度も概ね良好でしたが、言語や話す速度によっては追いつけない場面も見られ、今後の改善点として確認されています。
特に注目すべきは、多くの来場者から「他の施設でもこのシステムを使ってほしい」という期待の声が寄せられたことです。これは、この技術が観光施設だけでなく、さまざまな場所での多言語対応に大きな可能性を秘めていることを示唆しています。
スタンドアローン環境での稼働
今回の実証実験では、LLMを翻訳に特化させることで軽量化した「小型LLM(s-LLM)」を用いることで、インターネットに接続しない「スタンドアローン環境」(ノートブック型PC)でのシステム稼働を可能にしました。これにより、ネットワーク環境に左右されずにどこでも利用できるという、運用面での大きな利点が確認されました。
熊本城ミュージアム「わくわく座」は、外国人観光客の増加に対応するため、VR映像などの最新技術を積極的に導入してきました。今回の実証実験を通じて、さらに多言語対応を強化し、来場者の体験価値向上を目指しています。
LLM次世代自動同時通訳システムの今後の可能性
TOPPANは、LLMを活用した次世代同時通訳システムの構築により、以下の実現を目指しています。
1. 文脈、背景を踏まえた自動同時通訳
従来の自動同時通訳システムでは難しかった、文章や会話全体の文脈や背景を深く理解した上で、一貫性のある高精度な翻訳が可能になります。これにより、より自然で誤解の少ないコミュニケーションが実現します。
2. 自動同時通訳の多言語対応
LLMは、一つのシステム内で多様な言語を処理できる能力を持っています。これにより、従来の機械翻訳システムと比較して、より多くの言語に効率的に対応できるようになり、世界中の人々との円滑な交流をサポートします。
3. 専門用語への対応
特定の業界や用途に特化した追加学習(ファインチューニング)を行うことで、専門用語や固有名詞の翻訳精度を飛躍的に向上させることが可能です。これにより、国際会議や専門分野のセミナーなど、高度な専門性が求められる場面でも安心して利用できるようになります。
これらの進化は、ビジネスにおける国際交渉、学術会議、観光案内、さらには日常生活での多言語コミュニケーションにおいて、これまでにないレベルの質と効率性をもたらすでしょう。
今後の展開と目標
TOPPANは、今回の実証実験で得られた成果を踏まえ、LLMを活用した次世代自動同時通訳システムの開発をさらに進め、2026年度中の実用化を目指しています。
将来的には、プレゼンテーション、インバウンド(訪日外国人観光客)対応、在留外国人支援など、あらゆる場面での多言語コミュニケーションにこの自動同時通訳技術を展開していく計画です。TOPPANは、多言語サービス全体で、2028年までに約20億円の売上を目指しており、この技術がその中核を担うこととなるでしょう。
まとめ:言語の壁をなくすAIの力
TOPPANが熊本城ミュージアム「わくわく座」で実施した、国産LLMを用いた次世代自動同時通訳システムの実証実験は、多言語コミュニケーションの未来を大きく変える可能性を秘めています。LLMの登場により、AI翻訳は単なる言葉の置き換えではなく、文脈やニュアンスを理解し、人間が話すような自然な表現で伝えることが可能になりました。
この技術が実用化されれば、私たちは言語の壁を感じることなく、世界中の人々とより深く、よりスムーズに交流できるようになるでしょう。観光客は現地の文化をより深く理解し、ビジネスパーソンは国境を越えた協業を円滑に進め、誰もがグローバル社会の一員として活躍できる未来がきっと訪れるはずです。TOPPANの取り組みは、その未来への確かな一歩と言えるでしょう。
関連リンク
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TOPPANホールディングス ニュースリリース: https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2025/12/newsrelease251223_1.html
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投影用自動同時通訳システム「LiveTra®」: https://solution.toppan.co.jp/newnormal/service/livetra.html

