AIが肺がん早期発見を革新!長崎大学病院の研究で低線量CTにおけるAIの肺結節検出感度が41%向上、非専門医が専門医を上回る結果に

AIが医療を変える:肺がん早期発見における革命的な一歩

医療分野における人工知能(AI)の活用は、近年目覚ましい進歩を遂げています。特に、画像診断の領域では、AIが医師の診断を強力にサポートし、病気の早期発見に貢献する可能性が大きく期待されています。この度、長崎大学病院と医療画像診断AI開発のプラスマン合同会社が、低線量CTによる肺がん検診において、AIが肺結節(肺にできる小さな影)の検出感度を大幅に向上させるという画期的な研究成果を発表しました。

この研究は、2025年日本肺癌学会学術集会で発表され、AIシステム「Plus.Lung.Nodule」を使用することで、全ての読影医(医療画像を診断する医師)の肺結節検出感度が有意に向上し、特にAI支援を受けた非専門医が、AIを使用しない専門医の診断精度を上回るという驚くべき結果が示されました。本記事では、この重要な研究の内容をAI初心者にも分かりやすい言葉で詳しく解説し、AIが肺がん早期発見にもたらす可能性について掘り下げていきます。

長崎大学病院、日本肺癌学会学術集会で研究成果を発表

肺がん検診と低線量CTの重要性

肺がんは、日本におけるがん死亡原因の上位を占める深刻な疾患です。早期に発見し治療を開始することが、患者さんの予後(病気の経過や結果)を大きく左右します。肺がん検診では、胸部X線検査やCT検査が用いられますが、特に「低線量CT」は、少ないX線量で肺の微細な変化を捉えることができるため、被ばくのリスクを抑えつつ、より詳細な情報を得られるとして注目されています。

しかし、低線量CT画像は、通常のCT画像に比べてノイズ(画像のざらつき)が多く、小さな肺結節を見つけるのが難しいという課題も抱えています。そのため、読影医の経験や集中力に依存する部分が大きく、見落としのリスクをゼロにすることは困難でした。

プラスマン合同会社の「Plus.Lung.Nodule」とは?

今回の研究で用いられた「Plus.Lung.Nodule」は、プラスマン合同会社が開発した、CT画像を解析して読影を補助するプログラム医療機器です。このAIシステムは、CT画像の中から肺結節の候補を自動的に検出し、医師の診断をサポートすることを目的としています。日本国内の医療機関で実際に使用されており、その性能が今回の研究で改めて検証されました。

研究の主な成果:AIが診断精度を劇的に向上

長崎大学病院の研究チームは、61例に196個の結節がある75例の低線量CT画像(結節なし14例を含む)を、4名の専門医と5名の非専門医を含む計9名の読影医が評価するという方法で研究を実施しました。その結果、以下の主要な成果が得られました。

1. 低線量CTスクリーニング環境での検証

この研究は、実際の低線量CTスクリーニング(集団検診のような形で行われる検査)のプロトコル(手順)を用いて行われました。これにより、実臨床(実際の医療現場)での使用条件下でAIがどの程度役立つのかを評価することができました。低線量CTはノイズが多く、読影が難しい画像条件ですが、AIはその困難な状況下でも有効性を示しました。

2. 診断精度の顕著な向上

AI支援を受けて読影を行うことで、肺結節の検出感度が大幅に向上しました。

  • 症例ごとの感度: AI未使用時87.8% → AI使用時93.8%(p<0.0001)

  • 結節ごとの感度: AI未使用時52.3% → AI使用時73.8%(p<0.0001)

これは、AIの活用により、肺結節の検出能力が相対的に41%も改善されたことを意味します。つまり、より多くの肺結節をAIが見つけ出す手助けができるようになったということです。

3. 保守的な研究デザインが示す真の可能性

この研究では、読影医がAI「あり」で読影した後に「なし」で読影するという手法が採用されました。この方法では、AIで一度結節の存在を知ってしまうと、その記憶が「AIなし」での読影に影響し、AIなしの時の診断性能を実際よりも高く評価してしまう可能性があります(記憶バイアス)。そのため、今回公表された改善値は、AIの実際の効果を過小評価している可能性があり、実際の医療現場ではさらに大きな効果が期待できるかもしれません。

4. 特異度の維持:偽陽性を増やさないAI

診断精度が向上すると、同時に「偽陽性」(実際には病気ではないのに、病気だと誤って判断してしまうこと)が増えてしまうことがあります。しかし、この研究では、感度が向上したにもかかわらず、特異度(病気ではない人を正しく「病気ではない」と判断する能力)は約90%で安定していました(p=0.51)。これは、AIが不要な誤診を増やさず、読影医の業務負担を増加させないことを意味しており、臨床現場で非常に重要なポイントです。

5. 経験レベルを超えたAIの有用性

AI支援は、読影医の経験レベルに関わらず、その有用性を示しました。

  • 専門医の結節ごとの感度: AI未使用時61.4% → AI使用時78.7%(28%改善)

  • 非専門医の結節ごとの感度: AI未使用時45.1% → AI使用時71.6%(59%改善)

特に注目すべきは、AI支援を受けた非専門医の症例ごとの感度(93.4%)が、AIを使用しない専門医の感度(91.0%)を上回る結果を達成した点です。これは、AIが経験の浅い医師の診断能力を大きく引き上げ、医療提供体制の地域差や医師不足といった課題の解決にも貢献しうる可能性を示唆しています。

臨床ワークフローへの統合:効率的なAI活用法

研究では、AIを実際の医療現場にどのように統合するかについても評価されました。主に2つのAI統合方法が検証されています。

1. セカンドリーダー型(品質保証型)

医師が単独で画像を読影した後、AIを「二番目の読影医」として使用し、見落としがないかを確認する方法です。これは、医師の診断の質を保証し、最終的な確認を行う役割を担います。

2. コンカレントリーダー型(リアルタイム支援型)

医師がAIの解析結果を参照しながら、同時に診断を進める方法です。AIがリアルタイムで結節の候補を提示するため、医師はより効率的に、かつ見落としなく診断を進めることができます。

両方の方法で診断精度が向上することが確認されましたが、コンカレントリーダー型はセカンドリーダー型と比較してより効率的であり、特に経験の少ない医師において高い感度向上効果を示しました。一方、経験豊富な放射線科医は、どちらの方法でも同様に高い診断能力を維持できることが分かりました。

結節タイプ別の性能:あらゆるタイプの結節に対応

肺結節は、その形状や性質によっていくつかのタイプに分類され、それぞれ異なる管理方法が推奨されています。主なタイプは以下の通りです。

  • Solid nodule(充実性結節): 肺組織と同じくらいの密度を持つ、はっきりとした影。

  • Pure GGN(すりガラス影): 肺組織よりやや薄く、すりガラスのようにぼんやりとした影。早期の肺腺がんや前がん病変である可能性もあるため、注意深い経過観察が必要。

  • Part-solid nodule(部分充実性結節): すりガラス影の中に充実性成分が混じった影。悪性の可能性が高いとされ、より厳重な管理が求められる。

この研究では、AI支援によってこれら全てのタイプの結節で検出感度の向上が認められました。

  • Solid nodule: AI未使用時51.9% → AI使用時72.1%(39%改善)

  • Pure GGN: AI未使用時44.8% → AI使用時73.5%(64%改善)

  • Part-solid nodule: AI未使用時94.9% → AI使用時97.4%(元々高い感度を維持しつつ、さらに向上)

特に、Pure GGN(すりガラス影)のような見つけにくい結節においても、AIが大幅な改善を示したことは、早期肺がんの発見において極めて重要です。

専門家のコメント

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学分野 教授で、長崎大学病院 がん診療センター長の芦澤和人先生は、この研究の意義について以下のように述べています。

「本研究は、低線量CTスクリーニング画像を用いてAI支援の有効性を検証した重要な臨床研究です。AI支援により、読影の経験年数に関わらず全ての読影医の検出感度が有意に向上しました。特筆すべきは、特異度が維持されたことで、これは、AIが偽陽性を増やさず、読影医の業務負担を増加させないことを意味します。低線量CTによる肺がん検診の普及が進む中、本研究はAI支援が実用的なツールとなり得る可能性を示す重要なエビデンスであると考えられます。」

また、プラスマン合同会社 代表社員の大塚裕次朗氏は、開発者の視点から期待を寄せています。

「独立した臨床研究でAI支援の有効性が検証されたことは、開発者として大変嬉しく思います。今回の研究結果は、読影医の先生方を支援し、患者さんの早期発見に貢献できることを示すものです。今後も実臨床で真に役立つ製品開発を続けてまいります。」

プラスマン合同会社について

プラスマン合同会社は、2018年にアクチュアリー(保険や年金の数理計算を行う専門家)によって設立された、日本発の医療AI企業です。人工知能による診断画像の革新を推進し、患者さんのアウトカム(治療結果)の改善に貢献することを目指しています。

同社は、胸部CT解析AI「Plus.Lung.Nodule」のほか、胸部X線解析AI「Plus.CXR」、生成AIなど、多様なAI製品ポートフォリオを展開しています。日本国内だけでなく、米国や欧州、アジアを中心に国際展開も積極的に進めており、AIを通じて医療の質と効率の向上に貢献しています。プラスマン合同会社のAIソリューションに関する詳細は、以下のウェブサイトで確認できます。

まとめ:AIが拓く肺がん医療の未来

今回の長崎大学病院とプラスマン合同会社による研究成果は、AIが低線量CTによる肺がん検診において、読影医の診断能力を飛躍的に向上させ、特に経験の浅い医師の診断精度を専門医レベルにまで引き上げる可能性を明確に示しました。偽陽性を増やすことなく、結節の検出感度を大幅に改善できるAIは、肺がんの早期発見に大きく貢献し、結果として多くの患者さんの命を救うことにつながるでしょう。

AIは、医療従事者の負担を軽減し、診断の質を均てん化する(どこでも同じ質の医療を受けられるようにする)上でも重要な役割を果たすと期待されます。今後、このような医療AI技術がさらに普及し、誰もが質の高い医療を受けられる社会が実現することを期待します。AIは、まさに未来の医療を形作る上で不可欠な存在となりつつあると言えるでしょう。

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