AIは「思考のパートナー」へ進化:Perplexityとハーバード大学の大規模研究が明かすAIエージェントの新たな利用実態

AIエージェントとは何か?その進化の背景

近年、「AIエージェント」という言葉を耳にする機会が増えました。AIエージェントとは、ユーザーの指示を理解し、自律的に情報収集やタスク実行を行う人工知能のことです。例えば、特定の情報を調べて要約したり、複雑なデータを整理したり、さらにはビジネスレポートの草案を作成したりと、多岐にわたる作業をサポートしてくれます。

2025年は、このAIエージェント技術が本格的に普及した年と言われています。かつてはSFの世界の話だったAIが、私たちの日常生活や仕事の現場に深く浸透しつつあります。しかし、実際に人々がAIエージェントをどのように活用しているのか、その具体的な実態については、これまで大規模な調査が不足していました。

世界最大級のAIエージェント利用実態調査が公開

このような背景の中、会話型AI検索エンジンを提供するPerplexityと、世界的に権威あるハーバード大学の研究者が共同で、AIエージェントの利用実態に関する世界最大級の大規模研究を公開しました。この研究は、数億件に及ぶ匿名のユーザーデータを統計的に分析することで、AIエージェントが現実世界でどのように使われているかの全体像を可視化しています。

研究チームは以下の3つの主要な問いに焦点を当てました。

  1. どんな人がAIエージェントを導入しているのか?
  2. どれほど深く使い込んでいるのか?
  3. どのようなタスクをAIアシスタントに委ねているのか?

この調査結果は、AIエージェントが単なる「デジタル執事」のような単純作業の自動化ツールにとどまらず、より深い認知的な作業における「思考のパートナー」として機能しているという、従来の一般的な認識に疑問を投げかけるものとなっています。AIは、私たちの学び方、働き方、そして問題解決の方法そのものを変えつつあるのです。

詳細なレポートはこちらで確認できます。
How People Use AI Agents

大規模調査で判明したAIエージェントの利用実態

この大規模研究で最も注目すべきは、AIエージェントの全利用のうち、実に57%が認知タスク(cognitive work)に費やされているという事実です。認知タスクとは、思考や学習、分析、問題解決といった、人間の高度な知的能力を必要とする作業を指します。AIエージェントが、単なる情報検索や定型業務の自動化を超えて、より複雑で創造的な思考プロセスを支援していることが明らかになりました。

AIは「執事」から「思考のパートナー」へ

AIエージェントと聞くと、多くの人はホテル予約や雑務の自動化といった「デジタルコンシェルジュ」のような役割を想像するかもしれません。しかし、今回の研究結果は、そのイメージを大きく覆すものです。

認知タスクの内訳は以下の通りです。

  • 36%:生産性・ワークフローの向上

  • 21%:学習・リサーチの支援

これらのタスクは、人間の能力を拡張し、より高度な業務に集中できるようにするためのものです。AIエージェントは、まるで人間の脳の一部が拡張されたかのように、情報収集や初期的な要約・整理を自律的に行い、ユーザーが最終的な判断を下したり、より創造的な作業に時間を割いたりするための土台を提供しています。

Topics and Subtopics Breakdown Percentage

具体的な利用例としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 調達担当者が、新しい取引先の事例分析を行うための下調べをAIに任せる。

  • 学生が、難解な講義内容の理解を深めるために、AIに質問したり、関連情報を要約させたりする。

  • 金融担当者が、最新の株情報を整理・分析し、投資判断の材料とするためにAIを活用する。

これらの例からわかるように、AIエージェントは単に仕事を「避けるため」に使われているのではなく、ユーザーが「より良い仕事をするため」に活用されているのです。このデータは、人々がAIを「思考のパートナー」として捉え、難しい課題に取り組む能力を広げたいと考えていることを強く示唆しています。

利用行動の進化:娯楽から実用へ

AIエージェントの利用行動は、時間とともに変化していくことも明らかになりました。多くの新しいユーザーは、AIを使い始めた当初、旅行の計画や雑学の質問といった、比較的リスクの低い、娯楽的な用途から始める傾向があります。

しかし、一度AIエージェントを高度なタスク、例えばプログラミングコードのデバッグやビジネスレポートの要約などに活用し始めると、その後は生産性向上や学習支援といった実用的な領域で使い続ける傾向が非常に強いことが、行動データから判明しました。

これは、初期のパーソナルコンピューターが、当初は一部の愛好家による「趣味の機械」として普及し始めた後、次第にビジネスや教育の「業務インフラ」へと進化していった過程と非常に似ています。AIエージェントも同様に、単なる目新しいツールから、私たちの仕事や学習に不可欠な「実用ツール」としての定着が進んでいるのです。

Topic Distribution by First vs. All Queries

AIエージェントを誰がどう使っているのか?

この研究の重要な発見の一つは、「導入者の数」だけでなく、「日常的に深く活用しているユーザー」に注目することの重要性です。AIが単なる「便利な新機能」から「日常業務に組み込まれるツール」へと移行した職種が明確になってきました。

現在、以下の6つの主要職種が、AIエージェントの全体利用の約70%を占めています。

  • マーケティング

  • 営業

  • マネジメント

  • 起業家

  • 金融

  • 学生

特に、マーケティング、営業、マネジメント、起業家といった職種では、AIエージェントを導入した後の利用強度が非常に高く、日々のワークフローにAIを積極的に組み込む傾向が顕著です。

また、業界ごとの特徴も明確に現れています。

  • 金融職:利用の47%を生産性タスクに充てています。複雑なデータ分析やレポート作成に活用していると考えられます。

  • 学生:利用の43%を学習・リサーチに活用しています。論文作成のための情報収集や、講義内容の理解促進に役立てているでしょう。

  • デザイナーやホスピタリティ業界:それぞれの業界固有のタスクにAIエージェントを集中して利用しています。

このデータは、AIエージェントが非常に高い汎用性を持ち、ユーザーの文脈ごとのニーズを的確に反映していることを示しています。教育の場面では専門的なリサーチエンジンとして機能し、ビジネスの場面では多目的なアシスタントとして、また個人の生活においても様々な形で活用されています。実際、全クエリの半数以上が個人的な用途に費やされていることも明らかになっています。

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新しい知的労働の形:「問いを立てる仕事」の時代へ

今回の研究結果は、AIエージェントが人間の認知労働を拡張する「ハイブリッド・インテリジェンス経済」への移行を示す、最初の実証的な証拠と言えます。ハイブリッド・インテリジェンス経済とは、人間とAIが協力し合い、それぞれの強みを活かして新たな価値を生み出す経済の形を指します。

認知タスクがAIエージェントの利用の主流となっていることは、AIが人間の業務を「代替する」のではなく、より高度な判断や創造的な作業を「支援する」役割にシフトしていることを示しています。AIが情報収集や分析といった下準備を担うことで、人間はより本質的な「問いを立てる」ことや、複雑な問題に対する「最終的な意思決定」に集中できるようになります。

2025年の終わりが近づく今、「人々がAIエージェントを使うのか」という問いは、すでに過去のものとなりました。人々はすでにAIエージェントを日常的に活用しています。いま問われているのは、AIが常に業務に関与することを前提に、私たちの社会や経済全体が、思考し、学び、創造する「新しい働き方」にどれだけ早く適応できるのか、という点です。

この研究は、AIがもたらす未来の働き方や社会の姿を考える上で、非常に重要な示唆を与えてくれます。AI初心者の方も、この研究結果を参考に、AIエージェントがどのように私たちの生活や仕事を豊かにしていくのか、その可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

研究手法、分類体系、統計分析についての詳細は、以下の完全版研究論文をご覧ください。
完全版の研究論文

Perplexityとは

Perplexityは、リアルタイムで信頼できる情報源から回答を取得し、出典付きで返答する会話型AI検索エンジンです。2022年にOpenAI、Meta、Quora、Bing、Databricksの出身者らによって創業されました。現在では毎週2億件以上の質問に回答し、世界中のユーザーの「問い」を支える存在となっています。

公式サイト:
Perplexity公式サイト

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