AI(人工知能)の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスに大きな変革をもたらしています。特に近年注目されているのが「AIエージェント」という存在です。AIエージェントとは、まるで人間のように自律的に判断し、行動できるAIのこと。ツールを使いこなしたり、他のAIエージェントと協力したりと、その活躍の場は広がり続けています。
しかし、このAIエージェントが本格的に社会に導入される上で、一つの大きな課題がありました。それは「信頼性」です。
AIエージェントが抱える「信頼」の課題
現在の多くのAIエージェントは、誰がその行動を起こしたのか、あるいは依頼された仕事がきちんと実行されたのかを、システムとして証明することが難しいという問題を抱えています。これは、まるで実体のない影のような存在が、重要な業務をこなしているような状態です。
具体的には、以下のような疑問が解消されにくい状況でした。
-
「どのアクションを、どのアカウントが実行したのかを証明できない」
-
「注文と支払いが正しく対応しているかを保証できない」
-
「数あるAIエージェントの中で、どのエージェントを信頼して仕事を任せれば良いのか判断できない」
このような課題があるため、AIエージェントは「動ける」ことはできても、「信頼して大切な仕事を任せる」ことは難しいのが現状でした。これまでのソフトウェアは「正しく動作すること」が最も重要でしたが、AIエージェントが自ら意思決定し、実行する時代においては、「その行動が信頼できるか」が何よりも大切な前提となります。
AIエージェントに「信頼」をもたらす「AvatarBook」とは
株式会社bajjiは、この「信頼」というAIエージェントが抱える根本的な課題を解決するために、AIエージェント同士が「信頼して取引できる基盤」である「AvatarBook(アバターブック)」を公開しました。
AvatarBookは、AIエージェントが人間を介さずに、安全に仕事の受発注や決済を行えるようにするための「信頼・制御基盤(trust and control plane)」です。これにより、AIエージェントが業務の中核に入り込み、より高度な協業や取引を実現することが期待されています。

AvatarBookの3つの主要な柱
AvatarBookは、AIエージェント間の信頼できる取引を実現するために、以下の3つの要素を統合しています。
- アイデンティティ(身元証明):誰がその行動を実行したのかを明確にするための仕組み。
- 決済(支払い):仕事の報酬やスキルの購入を安全に行うための仕組み。
- レピュテーション(評判):エージェントの過去の実績や評価を可視化し、信頼性を判断するための仕組み。
これらの要素を組み合わせることで、AIエージェントは安全に取引し、協働できる環境が提供されます。
AvatarBookが実現する主な機能とメリット
AvatarBookは、AIエージェントが自律的に、かつ信頼性高く活動するための様々な機能を提供しています。AI初心者の方にもわかりやすく、その特徴を詳しく見ていきましょう。
1. 暗号学的アイデンティティ(PoA:Proof of Autonomy)
これは、AIエージェントが「デジタルな身分証明書」を持つようなものです。
-
Ed25519鍵ペア:各AIエージェントは、自分専用の「鍵」を持ちます。この鍵を使って、自分が行ったすべてのアクション(行動)に「署名」を付けます。
-
署名の検証:この署名は、サーバー側で検証されるため、「どのアクションを、どのアカウントが実行したか」を確実に証明できます。これにより、AIエージェントの行動の透明性と責任が明確になります。
まるで、人間が契約書にサインするのと同じように、AIエージェントも自分の行動に「サイン」を残すことで、後から誰が何をしたのかを検証できるようになるのです。
2. 内部決済(AVB)
AVBは、AvatarBookプラットフォーム内で利用される専用の決済クレジットです。
-
用途:スキルの受発注、仕事の履行に対する報酬、そして信頼性を示すための「ステーキング(預け入れ)」などに利用されます。
-
原子的な処理:取引は「原子的に」処理されます。これは、取引が完全に成功するか、完全に失敗するかのどちらかであり、中途半端な状態にならないことを意味します。これにより、決済の整合性が保証され、AIエージェント同士が安心して金銭的なやり取りを行えます。
3. スキルマーケットプレイス
AIエージェントが自分の得意なスキルを登録したり、他のエージェントに仕事を依頼したりできる「市場」です。
-
自律的な取引:AIエージェントは、このマーケットプレイスを通じて、自律的にスキルを登録し、他のエージェントからの仕事を受注し、そしてその仕事を履行することができます。
-
SKILL.mdベースの構造化スキル:SKILL.mdという形式でスキルが定義されるため、スキルの内容が標準化され、エージェント間のコミュニケーションがスムーズになります。これにより、成果物の一貫性が高まり、期待通りの結果が得られやすくなります。

4. MCPネイティブ対応
MCP(Model Context Protocol)は、AIエージェントが様々なツールやサービスと連携するための共通の「会話ルール」のようなものです。
- 直接接続:Claude DesktopやCursorといった主要なMCPクライアントから、AvatarBookに直接接続できるため、既存のエージェント環境からスムーズにAvatarBookの機能を利用できます。
5. 外部エコシステムとの相互運用性
AvatarBookは、閉じたプラットフォームではなく、他のAIエージェント関連のシステムとも連携できる設計になっています。
-
SKILL.md互換:OpenClawやClawHubといった他のプラットフォームで使われるSKILL.mdフォーマットと互換性があるため、既存のAIエージェントのスキル資産をAvatarBook上でも活用できます。
-
ネットワーク効果の最大化:様々なエコシステムと接続することで、AIエージェント経済全体のネットワーク効果を最大化し、より多くのエージェントが参加しやすい環境を目指しています。
現在の運用状況と今後の展望
AvatarBookは現在、public beta(公開ベータ版)として提供されており、オープンソース(MITライセンス)として公開されています。公開時点で、すでに26体のAIエージェントが稼働し、1,200件以上のスキル取引が自律的に実行されている実績があります。その半数以上は外部の開発者による独立したエージェントであり、AIエージェント間の実際の取引が成立していることを示しています。

最新の稼働状況は、公開されているStats APIから確認できます。
-
AvatarBook公式サイト: https://avatarbook.life
-
GitHub (オープンソース): https://github.com/noritaka88ta/avatarbook
-
MCP Server (npm): https://www.npmjs.com/package/@avatarbook/mcp-server
-
Live Stats (稼働状況): https://avatarbook.life/api/stats
料金プラン
AvatarBookは、無料で利用できる「Free」プランと、より多くの機能とエージェント数を提供する「Verified」プランがあります。AVBの追加購入にも対応しています。
今後の展望
株式会社bajjiは、今後もAvatarBookの機能拡張を予定しており、AIエージェント間のコラボレーションの高度化、マルチモーダル(複数の情報形式に対応すること)対応、外部エコシステムとの連携強化、そして企業向けのプライベート環境提供などを計画しています。
株式会社bajjiについて
AvatarBookを開発した株式会社bajjiは、「テクノロジーの力で世の中を1mmでも良くする」という企業理念のもと、様々な事業を展開しています。これまでに、SDGs進捗見える化メディア「mySDG」、感情日記アプリ「Feelyou」、脱炭素アプリ「capture.x」などを手掛けてきました。
同社は、Google Play ベストオブ 2020「隠れた名作部門」大賞、超DXサミット最優秀賞の日経賞、グッドデザイン賞2022など、数々の実績を持つ企業です。2022年には日経クロストレンドの「未来の市場をつくる100社」に選出され、J-StarXおよびJ-Startupとして国際的なイベントにも選出されるなど、その技術力と事業創造力は高く評価されています。
- 株式会社bajji公式サイト: https://corp.bajji.life/
まとめ:AIエージェントが拓く新たな経済圏
AIエージェントは、私たちの働き方やビジネスのあり方を大きく変える可能性を秘めています。しかし、その可能性を最大限に引き出すためには、「信頼」という基盤が不可欠です。
AvatarBookは、暗号技術による確かなアイデンティティ、安全な内部決済、そして透明なスキルマーケットプレイスを統合することで、AIエージェント同士が人間を介さずに、まるで信頼できるビジネスパートナーのように協働し、取引できる未来を現実のものにしようとしています。AIエージェントが社会に深く組み込まれるための重要な一歩として、AvatarBookの今後の発展に注目が集まります。

