AI・5G時代の基盤を築く!ジェイテクトサーモシステムの新型熱処理装置「SO2-60-F」が登場
現代社会において、AI(人工知能)や5G通信は私たちの生活や産業に革命をもたらし続けています。例えば、自動運転技術の進化、スマートファクトリーでの生産性向上、遠隔医療の実現、あるいはVR/AR技術による新たな体験の創出など、その応用範囲は日々拡大しています。これらの最先端技術がさらなる進化を遂げ、より高度な機能を提供するためには、その基盤となる「半導体」の性能向上が不可欠です。半導体は、AIが大量のデータを高速で処理するための「頭脳」であり、5Gが膨大な情報を瞬時にやり取りするための「神経」とも言える存在だからです。
今回、株式会社ジェイテクトのグループ会社である株式会社ジェイテクトサーモシステムは、この先端半導体製造に大きく貢献する新しい熱処理装置「SO2-60-F」を発売しました。この装置は、AIや5Gの未来を形作る上で、どのような役割を果たすのでしょうか。AI初心者の方にもわかりやすい言葉で、その重要性と技術の深掘りを行っていきます。
ジェイテクトサーモシステムとは?半導体産業を長年支える技術力
ジェイテクトサーモシステムは、1958年にベアリング(軸受)の熱処理装置を製造・販売する会社として設立されました。産業機械の心臓部とも言えるベアリングの性能を最大限に引き出すためには、精密な熱処理技術が欠かせません。この分野で培われた高度なノウハウが、同社の技術力の源となっています。
そして、1968年には半導体部門を立ち上げ、以来長きにわたり半導体産業の発展に貢献してきました。彼らの持つ熱処理に関する高度な技術は、半導体の製造工程において欠かせないものであり、多くの半導体メーカーにその装置が納入されてきた実績があります。特に、LCD(液晶ディスプレイ)向けの大型基板の熱処理や搬送技術においては、豊富な経験とノウハウを有しており、これが今回の新型装置開発にも活かされています。半導体分野への早期参入と長年の実績は、同社がこの分野で確かな技術力と信頼を築いてきた証と言えるでしょう。
なぜ「SO2-60-F」がAI・5G時代の半導体に不可欠なのか?
AIや5G通信は、膨大なデータを瞬時に処理し、高度な計算を行う能力を半導体に求めています。そのため、半導体チップはより小さく、より高性能に、そしてより複雑に進化し続けています。具体的には、低消費電力で高速な処理が可能であること、そして限られたスペースに高密度に集積できることが求められています。
この進化を支えるのが、「先端半導体パッケージ」と呼ばれる技術です。従来の半導体は、チップを一つずつ基板に搭載していましたが、AIや5Gの要求に応えるためには、複数のチップを効率的かつ高密度に接続する技術が必要になります。ここで登場するのが、「RDL(再配線層)インターポーザー」や「ガラスインターポーザー」といった新しい技術です。
RDLインターポーザーとガラスインターポーザーとは?
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RDL(再配線層)インターポーザー: RDLとは「Re-Distribution Layer」の略で、半導体チップの内部で電気信号を効率よく再配線するための層を指します。これを活用したインターポーザーは、複数の半導体チップを横並びに配置し、それらを細かな配線でつなぎ合わせることで、チップ間のデータ伝送速度を向上させ、全体としての性能を高めます。例えるなら、複数の小さな部屋(チップ)を、より効率的な廊下(RDL)でつなぎ、全体として大きな家(高性能半導体)の機能を高めるようなものです。これにより、限られた面積の中でより多くの回路を集積し、信号の遅延を最小限に抑えることが可能になります。
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ガラスインターポーザー: これは、ガラス製の基板の上に微細な配線を形成し、複数の半導体チップをその上に搭載する技術です。ガラスは電気的特性が非常に安定しており、熱膨張が少ないという特性を持つため、より高精度で信頼性の高い半導体パッケージを実現できます。特に、大型化する半導体パッケージにおいて、温度変化による材料の歪みが少ないガラスは、配線の断線や接触不良を防ぐ上で非常に重要な材料となります。
これらのインターポーザーを製造する過程では、非常に精密な「熱処理」が繰り返し行われます。熱処理は、材料の結晶構造を最適化し、内部の応力を除去し、薄膜の形成を安定させ、異なる材料間の接着強度を高めるなど、半導体の電気特性と信頼性を決定づける重要な工程です。少しでも温度にムラがあったり、不純物が混入したりすると、半導体の性能に大きな影響が出てしまい、不良品の発生(歩留まりの低下)に直結してしまいます。そのため、極めて高度な熱処理技術が求められるのです。
「SO2-60-F」の際立つ特長:大型化する半導体製造への対応
ジェイテクトサーモシステムが今回発売した「SO2-60-F」は、このような先端半導体の製造において、特に以下の点で優れた特長を持っています。
1. 優れた温度分布と高い熱処理精度
「SO2-60-F」は、従来の製品が持つ機密性の高い構造を受け継いでいます。これにより、装置内部を「低酸素雰囲気」という、非常に酸素が少ない環境に保つことができます。半導体製造において、酸素は金属配線の酸化や材料の劣化を引き起こす「敵」であり、これを極力排除することは、半導体デバイスの信頼性と性能を確保する上で極めて重要です。この低酸素雰囲気下でも、装置内の温度分布が極めて均一であるため、熱処理の精度が飛躍的に向上します。基板上のあらゆる場所で均一な熱処理が行われることで、RDLインターポーザーやガラスインターポーザーのような微細で複雑な構造を持つ半導体パッケージでも、材料の劣化や変形を最小限に抑え、安定した性能を引き出すことができるのです。これは、最終的な半導体製品の歩留まり向上にも大きく貢献します。
2. 大型基板への安定した搬送技術
AIや5G向けの半導体は、より多くの情報を処理するために、物理的なサイズも大型化する傾向にあります。大型基板の採用は、一度に製造できるチップの数を増やし、製造コストの削減や生産効率の向上に繋がるという大きなメリットがあります。しかし、大型の基板は、その重さや面積の広さから、搬送中にたわんだり、破損したり、あるいは微粒子が付着して不良の原因となったりするリスクが高まります。
「SO2-60-F」は、この大型化のトレンドに対応し、□510×515mmや□600×600mmといった大きなサイズの基板を安定して搬送できる特長を持っています。ジェイテクトサーモシステムは、長年培ってきたLCD向け大型基板の搬送技術を活かし、独自の搬送機構と精密な制御技術を組み合わせることで、精密な大型半導体基板に与える機械的ストレスを最小限に抑え、安全かつ確実に装置内で移動させることを可能にしました。これにより、製造工程での歩留まり(不良品が出ずに完成する割合)の向上にも貢献します。
3. 高い信頼性と実績に裏打ちされた設計
この装置は、ジェイテクトサーモシステムが半導体熱処理装置の分野で長年にわたり培ってきたノウハウと実績に基づいて設計されています。堅牢な構造と信頼性の高い制御システムにより、24時間365日稼働する半導体工場においても、安定した稼働を期待できます。これは、半導体製造ラインの停止が許されない状況において、非常に重要な要素となります。

JTEKTグループが描く未来:ソリューションプロバイダーへの変革
ジェイテクトグループは、「技術をつなぎ、地球と働くすべての人を笑顔にする」というミッションを掲げ、2030年までに目指す姿としてJTEKT Group 2030 Vision「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」を掲げています。これは、単に製品を提供するだけでなく、顧客が抱える課題を解決するための総合的な「ソリューション」を提供する企業グループへと変革していくことを意味します。
このビジョンにおいて、ジェイテクトグループは既存製品の高付加価値化と新領域へのチャレンジを成長の両軸としています。半導体産業においても、ジェイテクトグループは様々な形で貢献しており、ジェイテクトサーモシステムはそのグループの一員として、熱処理に関する専門的な知識と技術(コンピタンス)を最大限に活用し、先端半導体の製造を支える重要な役割を担っています。今回の「SO2-60-F」の発売も、このビジョンに基づいた新領域へのチャレンジであり、既存製品の高付加価値化と成長を両立させる取り組みの一環と言えるでしょう。

今後の展望:モビリティ社会の進化を支えるジェイテクトサーモシステム
ジェイテクトサーモシステムは、今後、モビリティ社会の進化を支えるAIや5G通信向け先端半導体を手掛ける国内外の半導体メーカー各社に対し、「SO2-60-F」の提案と納品を積極的に進めていく予定です。これにより、世界中の半導体工場で、より高性能な半導体が効率的に生産されることが期待されます。高性能な半導体が安定的に供給されることは、AI技術のさらなる発展や5G通信網の拡充に直結し、私たちの生活の質の向上に寄与することでしょう。
同時に、同社はこれまで実績のあるΦ300㎜や□310㎜といったサイズの熱処理装置の販売も引き続き推進していく方針です。これは、多様な半導体製造ニーズに応え続けるという同社の姿勢を示しており、幅広い顧客層への貢献を目指しています。
ジェイテクトグループ全体としても、各社が持つ「モノづくり」と「モノづくり設備」に関する専門技術(コンピタンス)を結びつけることで、半導体産業への貢献をさらに深めていく考えです。これにより、AIや5Gが牽引する新たなモビリティ社会の実現に向けた、より包括的なソリューション提供を目指していきます。例えば、半導体製造に必要な様々な工程において、グループ内の技術を連携させることで、顧客にとって最適なトータルソリューションを提供することが可能になると考えられます。
まとめ:未来を創る基盤技術としての熱処理装置
ジェイテクトサーモシステムが発売した先端半導体パッケージ用熱処理装置「SO2-60-F」は、一見すると地味な装置に見えるかもしれません。しかし、AIや5Gといった最先端のテクノロジーが私たちの生活に浸透し、社会を大きく変革していくためには、このような「基盤技術」が非常に重要です。目に見えないところで、私たちの未来を支える縁の下の力持ちと言えるでしょう。
「SO2-60-F」は、その高い熱処理精度と大型基板への対応能力によって、RDLインターポーザーやガラスインターポーザーといった次世代の半導体パッケージング技術の製造を強力にサポートします。これは、AIの処理能力向上や5Gの高速・大容量通信の実現に直結し、自動運転、スマートシティ、高度医療など、様々な分野でのイノベーションを加速させることでしょう。
ジェイテクトサーモシステム、そしてジェイテクトグループの「ソリューションプロバイダー」としての挑戦は、見えないところで私たちの未来を豊かにする重要な役割を担っています。今後の彼らの技術革新が、どのような新しい価値を生み出し、私たちの社会をどう変えていくのか、大いに注目していきましょう。この熱処理装置の進化が、AIと5Gが織りなす未来をさらに明るく、そして確かなものにしていくことは間違いありません。

