2026年1月9日、株式会社KADOKAWAは、新年の幕開けとともに、現代社会が直面する重要なテーマを深く掘り下げる2冊の新書を発売しました。その中でも特に注目されるのは、『AIの倫理 人間との信頼関係を創れるか』(編著:栗原 聡)です。AI(人工知能)が私たちの日常生活、ビジネス、そして社会のあり方そのものを大きく変えつつある今、AIと人間がどのように共存していくべきかという問いは、これまで以上に重要性を増しています。
本記事では、AI初心者の方にも理解しやすいように、『AIの倫理』が提示する多様な論点を深掘りし、AIがもたらす恩恵と課題、そして人間社会がどのように対応していくべきかについて、詳しく解説していきます。
『AIの倫理 人間との信頼関係を創れるか』とは?

『AIの倫理 人間との信頼関係を創れるか』は、「AIと共に生きる」ために私たちが考察すべき多岐にわたる課題を、各分野の専門家が深く検討した一冊です。AIの急速な進化は、技術的な側面だけでなく、法律、経済、社会、文化といったあらゆる領域に新たな問いを投げかけています。
この書籍は、人工知能学会会長を務める慶應義塾大学理工学部教授の栗原聡氏が編著を担当。栗原氏は、マルチエージェント、複雑ネットワーク科学、計算社会科学などの研究に従事し、『AIにはできない 人工知能研究者が正しく伝える限界と可能性』(角川新書)など、AIに関する多くの著書を持つ第一人者です。彼の専門知識と、各分野の専門家たちの知見が結集された本書は、AI時代の羅針盤となるでしょう。
AIの創作と著作権の衝突
AIが小説や絵画、音楽などを生成する能力は目覚ましく進化しています。しかし、AIが作った作品の著作権は誰に帰属するのでしょうか。AIの開発者でしょうか、それともAIそのものに権利が認められるのでしょうか。現状の法律では、著作権は「人間の創作物」に与えられるものであり、AIの創作物をどのように扱うべきかは世界中で議論が続いています。もしAIが自律的に創作活動を行うようになった場合、従来の著作権法では対応しきれない問題が噴出する可能性があります。本書では、このような複雑な法的課題について、専門家が多角的に分析しています。
自動運転車の事故における責任の所在
自動運転技術は、私たちの移動手段に革命をもたらす可能性を秘めています。しかし、万が一自動運転車が事故を起こした場合、その責任は誰が負うべきでしょうか。車の所有者、メーカー、ソフトウェア開発者、あるいはAIシステム自体に責任能力があるのでしょうか。この問題は、単なる技術的な課題ではなく、倫理的、法的な枠組みの再構築を必要とします。事故の状況やAIの判断プロセスによって責任の所在が変わる可能性もあり、社会全体で合意形成を図る必要があります。
人間の脆弱性を衝くAIは認められるか
AIは、人間の感情や行動パターンを分析し、最適化された情報を提供する能力を持っています。しかし、この能力が悪用され、人間の心理的な脆弱性を突いたり、意図的に誤った情報や偏った情報を与えたりする可能性も否定できません。例えば、個人の興味関心や感情を深く理解したAIが、特定の購買行動や政治的意見へと誘導するような事態は、倫理的に許されるべきではありません。本書では、このようなAIの悪用リスクや、人間の尊厳を守るための倫理的ガイドラインの必要性についても考察しています。
法制度、人格、AIへの信頼、偽情報と認知戦
『AIの倫理』では、上記の具体的な事例だけでなく、より広範なテーマについても深く掘り下げています。
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法制度の整備: AIの進化は既存の法制度を常に上回り、新たな規制やルールの必要性を生み出しています。各国がAI規制の動きを見せる中、どのような法制度が求められるのか、その方向性が議論されています。
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AIの人格: AIが高度な知能を持ち、人間のような振る舞いをするようになった場合、AIに「人格」を認めるべきかという問いも浮上します。これはSFの世界の話のように聞こえるかもしれませんが、その倫理的、哲学的な議論はすでに始まっています。
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AIへの信頼: AIが社会に受け入れられ、その恩恵を最大限に享受するためには、AIに対する社会的な信頼が不可欠です。AIの判断プロセスの透明性や、説明責任の確保が、信頼構築の鍵となります。
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偽情報と認知戦: 生成AIの登場により、本物と見分けがつかない偽情報(フェイクニュース)やディープフェイクが容易に作成・拡散されるようになりました。これは民主主義の根幹を揺るがしかねない深刻な問題であり、AIによる偽情報との戦いは、現代社会の喫緊の課題となっています。
これらの課題は、AIが単なる道具ではなく、私たちの社会構造や人間関係に深く影響を及ぼす存在へと変化していることを示しています。本書は、これらの複雑な問題を多角的な視点から解き明かし、AIと人間がより良い関係を築くための道筋を探るための貴重な一冊となるでしょう。
なぜ今、AIの倫理が重要なのか?
AI技術の発展は、医療診断の精度向上、交通渋滞の緩和、災害予測など、私たちの生活に計り知れない恩恵をもたらしています。しかし同時に、雇用への影響、プライバシー侵害、アルゴリズムによる差別、自律型兵器の開発といった新たなリスクも顕在化しています。
AIの倫理を考えることは、単に技術の危険性を指摘するだけでなく、AIが社会に与えるあらゆる影響を予測し、技術の方向性を適切に導くために不可欠です。技術の進歩だけを追求し、倫理的な側面を軽視すれば、予期せぬ社会問題を引き起こし、最終的にはAIの可能性自体を阻害してしまう可能性もあります。
AIの倫理は、技術者だけでなく、政策立案者、企業、そして私たち一人ひとりが向き合うべき普遍的なテーマです。AIの力を最大限に活用しつつ、人間の価値観や社会の安定を守るためのルールやガイドラインを、継続的に議論し、更新していく必要があります。
AIと人間が共存する未来に向けて
『AIの倫理』は、AIと人間が共存する未来を築くための対話を促すものです。本書を通じて、読者はAIがもたらす様々な倫理的、法的、社会的な課題について深く理解し、自分自身の考えを形成するきっかけを得られるでしょう。
AIの進化は止まりません。だからこそ、私たちは常に学び、議論し、より良い未来のために行動し続ける必要があります。KADOKAWA新書『AIの倫理』は、そのための第一歩となる、まさに今読むべき一冊と言えるでしょう。
書籍情報
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『AIの倫理 人間との信頼関係を創れるか』
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編著:栗原 聡
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定価:1,078円 (本体980円+税)
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頁数:272ページ
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電子書籍も発売中!
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同時発売のもう一つの新書:『家族不適応殺』
KADOKAWAは、『AIの倫理』と同時に、人間社会の深淵を探るもう一つの新書も発売しています。

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『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』
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著者:インベ カヲリ★
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定価:1,320円 (本体1,200円+税)
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頁数:368ページ
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2008年以降の無差別殺人事件の犯人に共通する「普通」の背景と、理解不能な動機に迫る、約3年をかけた驚愕の事件ルポです。第53回大宅壮一ノンフィクション賞と第44回講談社本田靖春ノンフィクション賞の最終候補となった作品で、現代社会が抱える闇を深く見つめる一冊となっています。
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まとめ
KADOKAWAが新年に送り出した2冊の新書は、それぞれ異なる角度から「人間とは何か」「社会とは何か」という根源的な問いを投げかけます。
特に『AIの倫理』は、AIが急速に社会に浸透する現代において、私たちが避けては通れない倫理的、法的課題を専門家の視点から深く考察する貴重な機会を提供します。AIがもたらす未来は、技術の進歩だけでなく、私たち一人ひとりの倫理観と社会的な合意によって形作られていきます。
この書籍を手に取り、AIと人間がより良い形で共存できる社会の実現に向けて、共に考え、議論を深めていくことが、きっと豊かな未来へと繋がるでしょう。

