AI翻訳時代でも「自分の言葉」を選ぶ若者たち:留学経験高校生459名調査から見えた語学学習の真価
近年、AI翻訳技術の進化は目覚ましく、スマートフォンアプリやWebサービスを使えば、瞬時に異なる言語間でのコミュニケーションが可能になりました。海外旅行やビジネスシーンでAI翻訳ツールを活用する機会も増え、まるで言語の壁がなくなったかのように感じられることも少なくありません。このようなAI翻訳が日常に浸透する時代において、「わざわざ語学を学ぶ意味はあるのだろうか?」と疑問に感じる方もいるかもしれません。
しかし、本当に語学学習は不要になったのでしょうか?特に、実際に異文化に触れ、言語の壁を乗り越えてきた留学経験のある若者たちは、この問いにどのように答えるのでしょうか。
今回、学校法人KTC学園は、留学経験のある高校生459名を対象に、「AI時代に語学を学ぶ意味」に関するアンケート調査を実施しました。この調査からは、AI翻訳の便利さを享受しながらも、なお「自分の言葉」でコミュニケーションを取ることの価値を深く理解している若者たちの姿が浮き彫りになりました。本記事では、その調査結果を詳しく解説し、AI時代における語学学習の真の意義について考えていきます。
調査概要:AI時代に語学を学ぶ意味を問う
この調査は、AI翻訳技術が高度化する中で、留学を経験した高校生が語学学習に対してどのような意識を持っているのかを明らかにする目的で実施されました。
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調査テーマ: AI時代に語学を学ぶ意味
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調査対象: 留学経験のある高校生
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回答数: 459名
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調査方法: Webアンケート
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調査時期: 2025年
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調査主体: 学校法人KTC学園
調査結果1:約9割の高校生が翻訳アプリ・AI通訳を使用
まず、AI翻訳ツールの利用状況について尋ねたところ、驚くべき結果が明らかになりました。回答者の約9割にあたる93.2%の高校生が、翻訳アプリやAI通訳を使用した経験があると回答しました。

この数字は、AI翻訳がもはや特別なツールではなく、若年層にとっても日常生活の一部として広く浸透していることを明確に示しています。海外でのコミュニケーションはもちろんのこと、学習や趣味の場面でも、手軽に利用できるAI翻訳の恩恵を受けていることが伺えます。AIが言語の壁を低くし、国際的な情報へのアクセスを容易にしていることは間違いありません。
調査結果2:AI翻訳時代でも8割の高校生が「語学を学ぶ意味はある」と回答
AI翻訳がこれほどまでに普及しているにもかかわらず、今回の調査で最も注目すべきは、次の質問に対する回答です。「AIが翻訳してくれる時代でも語学を学ぶ意味はあるか」という問いに対し、約8〜9割にあたる80.4%の高校生が「意味がある」と回答しました。

これは、AI翻訳の便利さを理解しつつも、それだけでは代替できない語学学習の価値を、多くの若者が感じていることを示唆しています。単に言葉を別の言語に変換する以上の、より深い意味を語学に見出していると言えるでしょう。
調査結果3:「言葉が通じること」と「心が通じること」は違う
では、なぜAI翻訳が進化しても語学学習に意味があると感じるのでしょうか。そのヒントとなるのが、「『言葉が通じること』と『心が通じること』は違うと思うか」という設問に対する回答です。
この問いに対して、9割以上の高校生が「違うと思う」と回答しました。具体的には、「とても思う」が55.9%、「少し思う」が34.1%となり、合わせて90%の高校生が両者に違いがあると認識していることが分かります。

この結果は、AI翻訳ではカバーしきれない、人間同士のコミュニケーションにおける感情や共感の重要性を浮き彫りにしています。自由記述では、「翻訳よりも、自分で話した方が気持ちが伝わった」といった声が多く寄せられました。これは、たとえ完璧な翻訳でなくても、自分の言葉で直接伝えることによって、相手との間に特別な信頼関係や理解が生まれることを示しています。
AI時代に「自分の言葉」を選ぶ意味:深まるコミュニケーションの価値
今回の調査結果から、AI翻訳がどれほど進化しても、人間が自らの言葉で語学を学ぶことの価値は失われないどころか、むしろその重要性が再認識されていることが分かります。
AI翻訳の限界と「生きた言葉」の力
AI翻訳は、情報伝達の効率化において非常に強力なツールです。しかし、言語は単なる情報の羅列ではありません。そこには文化、歴史、感情、そして話者の個性といった、多くの非言語的な要素が複雑に絡み合っています。
例えば、同じ「ありがとう」という言葉でも、発する人の表情、声のトーン、状況によって伝わるニュアンスは大きく異なります。AI翻訳は、文字通りの意味を伝えることはできても、その背後にある感情の機微や文化的な背景、あるいは相手への敬意といった深層的な部分までを完璧に伝えることは難しいのが現状です。
留学経験のある高校生たちは、異文化の中で実際に生活し、コミュニケーションを取る中で、この「生きた言葉」の力を肌で感じてきたはずです。ぎこちない表現であっても、一生懸命に自分の言葉で伝えようとする姿勢は、AIによる完璧な翻訳よりも、はるかに相手の心に響くことがあります。これは、相手への敬意や親近感を伝え、より深い人間関係を築く上で不可欠な要素と言えるでしょう。
共感と信頼を築く「心の通じるコミュニケーション」
「言葉が通じること」が情報の交換だとすれば、「心が通じること」は共感や信頼の構築を意味します。AI翻訳は前者を得意としますが、後者は人間の専売特許とも言える領域です。
留学経験者が「自分で話した方が気持ちが伝わった」と感じるのは、まさにこの「心が通じるコミュニケーション」の重要性を体験したからでしょう。自分の言葉で語りかけることで、相手は「この人は私に直接話してくれている」と感じ、そこに人間的な繋がりが生まれます。言葉の壁を乗り越えようと努力する姿は、相手に誠実さや情熱を伝え、共感を呼び、結果として深い信頼関係へと発展するのです。
このような経験は、単に語学力が向上するだけでなく、自己肯定感の向上や異文化理解の深化にも繋がります。AIが提供する効率性だけでは得られない、かけがえのない人間的成長の機会を語学学習は与えてくれるのです。
グローバル社会で求められる「AIを使いこなす力」と「人間らしいコミュニケーション力」
現代のグローバル社会では、AI翻訳を完全に否定するのではなく、むしろそれを賢く使いこなす能力が求められます。しかし、AIに任せきりにするのではなく、その上で自らの言葉でコミュニケーションを図る力が、真の国際人としての資質となるでしょう。
例えば、ビジネスの交渉の場で、AI翻訳で内容を理解しつつも、最終的な合意形成や人間関係の構築には、自分の言葉で相手の感情に寄り添い、信頼を築くコミュニケーションが不可欠です。留学経験のある高校生たちが感じている「語学を学ぶ意味」は、まさにこのような未来を見据えた、より高度なコミュニケーション能力への期待と言えるかもしれません。
AIと共存する未来の語学学習
今回の調査結果は、AI翻訳が進化する現代においても、語学学習が持つ本質的な価値が失われることはないという力強いメッセージを私たちに投げかけています。むしろ、AIという強力なツールを得たことで、人間はより高度で、より深い「心の通じるコミュニケーション」を追求できるようになるのかもしれません。
AIを「教師」ではなく「ツール」として活用する
未来の語学学習は、AIを「教師」としてではなく、学習をサポートする「強力なツール」として活用する形へと進化していくでしょう。AI翻訳を使って分からない単語やフレーズを瞬時に調べたり、発音練習のパートナーにしたりと、学習の効率を高める様々な使い方が考えられます。
しかし、最終的に「自分の言葉」で表現し、相手と心を通わせる経験は、AIには代替できません。AIが提供する情報をインプットしつつ、それを自分の思考や感情と結びつけ、アウトプットするプロセスこそが、真の語学力であり、人間力を育む源泉となります。
実践的な学びの重要性
今回の調査主体である学校法人KTC学園は、広域通信制・単位制 屋久島おおぞら高等学校の運営や、通信制高校サポート校 おおぞら高等学院の運営を通じて、生徒一人ひとりの「なりたい大人になるための学校®」という教育プログラムを提供しています。このような実践的な学びの場では、単なる知識の詰め込みだけでなく、留学のような実体験を通じて、AIでは得られない「心の通じるコミュニケーション」の重要性を深く理解する機会が得られるでしょう。
AI時代における語学学習は、単に外国語を習得するだけでなく、異文化を理解し、多様な価値観を持つ人々と共感し、信頼関係を築くための人間力を養うプロセスへと深化していくはずです。
詳細情報と関連コンテンツ
本調査の背景や、留学を経験した高校生の具体的な声を含む解説記事は、学校法人KTC学園の公式サイト「おおぞらコラム」に掲載されています。より深く内容を知りたい方は、ぜひそちらもご参照ください。
まとめ:AIと共存し、「自分の言葉」で未来を拓く
AI翻訳技術の進化は、私たちのコミュニケーションのあり方を大きく変えつつあります。しかし、留学経験のある高校生を対象とした今回の調査からは、AIの利便性を享受しつつも、それだけでは満たされない「自分の言葉」で伝えることの深い価値が明らかになりました。
「言葉が通じること」と「心が通じること」は違うという彼らの認識は、単なる情報伝達を超えた、人間らしい共感や信頼の構築にこそ、語学学習の真価があることを示しています。AIは強力なツールであり、私たちの可能性を広げてくれますが、そのツールを使いこなし、最終的に「自分の言葉」で人々と心を通わせる力こそが、これからのグローバル社会で若者たちが活躍するための鍵となるでしょう。
AIと共存しながら、人間ならではのコミュニケーション能力を磨き、多様な世界の人々と深く繋がっていく未来は、きっと私たちをより豊かにしてくれるはずです。語学学習は、その未来を拓くための重要な扉の一つなのです。

