金融市場に革命!AI/アルゴリズム取引の透明性を高める世界標準規格『ClearTrace Protocol (CTP) v1.0』が誕生【RegTechが実現する説明責任】
近年、AI(人工知能)や高度なアルゴリズムは、私たちの生活のあらゆる側面に深く浸透しています。特に金融市場においては、取引の高速化や自動化を推し進め、市場の効率性を大きく向上させました。しかし、その一方で、AIやアルゴリズムが「なぜその取引を行ったのか」という判断の根拠が分かりにくくなる「ブラックボックス問題」が深刻化しています。
この問題は、金融市場の透明性を損ない、万が一トラブルが発生した際に責任の所在を突き止めることを難しくするだけでなく、市場全体の信頼性にも影響を与えかねません。このような状況に対応するため、世界中で金融取引の透明性とAIの説明責任(Explainability)を求める声が高まっています。
そんな中、AI MQL合同会社は、2025年11月22日に、この「AIのブラックボックス問題」と「金融市場の透明性」という世界的な課題を解決するための画期的な世界標準規格『ClearTrace Protocol (CTP) v1.0』をオープン標準として公開しました。CTPは、金融取引の意思決定プロセスと実行結果を、誰にも改ざんできない形で記録し、いつでも検証できるようにする、次世代のRegTech(Regulation Technology:規制技術)プロトコルです。
ClearTrace Protocol (CTP) v1.0とは?
CTPは、AIやアルゴリズムによる取引のシグナル生成から、注文、約定(取引が成立すること)、そして決済に至るまでの一連のイベントを、まるで詳細なログ(記録)のようにナノ秒単位の精度で記録するプロトコルです。この記録は、取引が行われた理由や、AIがどのような判断を下したのかを後から正確に追跡・検証するために使われます。

CTPの最大の特徴は、特定の企業やベンダーに依存しない「オープンな規格」である点です。これにより、金融業界全体で広く採用され、共通の基準として利用されることが期待されています。CTPは、金融取引の透明性を確保し、AIの「説明責任」を証明するための、いわば「金融取引の監査ログ」のような役割を果たすRegTechプロトコルなのです。
CTPが解決する金融市場の主要な課題
金融市場では、AIやアルゴリズムの進化に伴い、いくつかの重要な課題が浮上しています。CTPは、これらの課題を根本から解決し、より健全で透明性の高い市場を構築することを目指しています。
1. AI取引のブラックボックス問題と説明責任の欠如
AIが複雑な取引戦略を実行する際、その判断プロセスは人間には理解しにくい「ブラックボックス」となりがちです。これにより、「なぜこの株を買ったのか」「なぜこのタイミングで売却したのか」といったAIの意思決定の根拠を後から検証・説明することが非常に困難になります。この説明責任の欠如は、市場の公正性や投資家保護の観点から大きな問題となります。
2. 国際的な規制強化への対応の難しさ
欧州のMiFID II(第2次金融商品市場指令)や米国のCAT(Consolidated Audit Trail)といった国際的な金融規制は、取引の完全なライフサイクル追跡や、アルゴリズムの識別を義務付けています。これらの規制は、市場の健全性を保つために不可欠ですが、AIやアルゴリズムによる複雑な取引を正確に記録し、規制当局に報告することは、既存のシステムでは非常に難しい課題でした。
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MiFID II(第2次金融商品市場指令): 欧州連合(EU)における金融商品市場の規制枠組みで、取引の透明性向上、投資家保護の強化、市場の効率性向上を目的としています。特に、アルゴリズム取引に関する詳細な記録と報告を義務付けています。
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CAT(Consolidated Audit Trail): 米国で導入されている統合監査証跡システムで、すべての証券取引のライフサイクルを追跡し、詳細な情報を記録することを目的としています。市場操作や不正行為の早期発見に役立ちます。
3. プロップファーム業界における不正取引・コピー取引の問題
自己勘定取引を行うプロップファーム(自己資金で金融商品を取引する会社)業界では、トレーダー間の不正なコピー取引や、見せ玉(Spoofing)といった市場不正行為が問題となることがあります。また、トレーダーへの公平な利益配分を証明するためにも、信頼できる取引の証跡記録が不可欠です。しかし、これらの証拠を正確に記録し、保護する仕組みが不足していました。
ClearTrace Protocol (CTP)は、これらの業界全体の課題を解決し、次世代の金融市場における信頼と透明性の基盤を構築するために誕生したのです。
ClearTrace Protocol (CTP) v1.0の画期的な特徴
CTPは、取引シグナルの生成から注文、約定、決済に至るまでの一連のイベントを、因果関係を持つ「状態遷移」としてナノ秒単位の精度で詳細に記録するプロトコルです。特定のベンダーに依存しないオープンな規格として、以下の革新的な特徴を備えています。
1. AI取引の完全な説明責任(CTP-AI拡張)
CTPの最も重要な特徴の一つは、AIの判断根拠を事後的に完全に再現可能にする点です。これは、まるでAIが考えた過程をビデオで巻き戻して見るように、後からどんなデータに基づいて、なぜそのような結論に至ったのかを詳細に追跡できることを意味します。
具体的には、以下の情報を記録します。
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使用されたAIモデルのバージョン(ハッシュ値): どのバージョンのAIモデルが使われたかを特定します。ハッシュ値とは、データから生成される固有の短い文字列で、少しでもデータが変わるとハッシュ値も変わるため、モデルの改ざんを防ぎます。
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推論時の入力データ(特徴量): AIが判断を下す際に入力として与えられたデータ(例えば、株価の変動、ニュース記事、経済指標など)を記録します。
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どの特徴量が判断に寄与したか(SHAP/LIME値等の説明可能性指標): AIが判断を下す際に、どの入力データが特に重要だったのかを示す指標(SHAPやLIMEなど)を記録します。これにより、「AIがこのデータを見て、このような理由でこの取引を判断した」という具体的な根拠を明確にすることができます。
これらの記録により、AIのブラックボックス問題を解消し、人間がAIの判断を検証し、理解することを可能にします。
2. 改ざん不可能性と国際規制への完全準拠(RegTech標準)
CTPは、記録された監査証跡の信頼性を最大限に高めるため、最先端の技術と国際的な規制基準への完全準拠を目指しています。
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改ざん不可能性: ハッシュチェーンとMerkle Tree技術を採用することで、記録された証跡の改ざんを数学的に防止し、高い証拠能力を保証します。これは、記録された一つ一つのデータを鎖のようにつなぎ合わせ、少しでも変更が加えられるとすぐに検知できるような仕組みです。
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MiFID II / CAT対応: ナノ秒(10億分の1秒)精度のタイムスタンプ(PTPv2/NTPという高精度時刻同期技術を要件化)と、拒否・取消を含む完全な注文ライフサイクル追跡を実現します。これにより、すべての取引イベントが正確な時刻とともに記録され、国際的な規制が求める詳細な監査証跡要件を満たします。
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GDPR対応(Crypto-shredding): 欧州の一般データ保護規則(GDPR)に代表される個人情報保護規制における「忘れられる権利」などに対応するため、先進的な「Crypto-shredding」技術を採用しています。これは、監査ログの完全性を維持しつつ、ユーザー固有の暗号鍵を破棄することで、個人情報のみを復元不可能にする画期的な技術です。
3. HFT(高頻度取引)対応の高性能アーキテクチャ
HFT(High Frequency Trading:高頻度取引)は、ミリ秒、マイクロ秒といった極めて短い時間で大量の取引を行うため、システムの遅延は許されません。CTPは、このような超高速取引環境でもパフォーマンスを犠牲にすることなく導入できるよう、以下の高性能アーキテクチャを採用しています。
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Zero-Copy/サイドカーアーキテクチャ: 取引執行のクリティカルパス(取引が完了するまでの最も重要な経路)に影響を与えない設計です。Zero-Copyはデータのコピーにかかる時間をなくす技術、サイドカーはメインのアプリケーションとは別のプロセスで補助的な処理を行う方式で、取引速度を最大限に保ちます。
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Simple Binary Encoding (SBE)形式: 高速通信に適したデータ形式を採用しています。これにより、記録されるデータが効率的に処理され、遅延を最小限に抑えることができます。
4. 不正取引・コピー取引の検知(CTP-DETECT拡張)
プロップファーム業界特有の課題に対応するため、CTPは不正行為の検知・証拠保全に役立つ拡張機能を提供します。
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記録される情報: デバイス情報、注文の類似度スコア(OrderCloneScore)、発注時間差(SyncDelta)などが詳細に記録されます。
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不正検知: これらの情報に基づいて、疑わしいコピー取引やグループ取引、見せ玉(Spoofing:実際には取引するつもりのない大量の注文を出して市場を欺く行為)といった市場不正行為の証拠を保全し、検知に役立てることができます。
CTPのガバナンス体制とオープン標準としての意義
ClearTrace Protocol (CTP)は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY 4.0)の下で公開されており、ロイヤリティフリー(使用料なし)で誰でも実装することが可能です。
本規格の中立性と透明性を永続的に担保するため、仕様の維持・管理を担う専門組織「Aegis ClearTrace Standards Committee (ACSC)」(設立準備中)によって管理される予定です。ACSCは、金融機関、プロップファーム、規制専門家、技術者など、多様なステークホルダー(利害関係者)の参加を募り、GitHub上でのRequest for Comments (RFC) プロセスを通じて、オープンかつ民主的に仕様の改善・改訂を行っていく計画です。
CTPの仕様書は、以下のGitHubリポジトリで公開されています。
今後の展開
AI MQL合同会社は、CTPの普及と実装をさらに推進するため、現在設立準備中の「Aegis ClearTrace株式会社」(事業主体)を通じて、さまざまなサービス提供を予定しています。
具体的には、CTPログの解析・監査エンジン(Aegis Judge Engine)や、CTP準拠を証明する認証サービスなどを提供し、金融機関やプロップファームがCTPをより簡単に導入・活用できるよう支援していくとのことです。AI MQL合同会社は、ClearTrace Protocolが金融業界の新たな標準として広く採用され、より公正で透明性の高い市場の実現に貢献することを確信しています。
AI MQL合同会社について
AI MQL合同会社は、金融分野におけるAIおよびアルゴリズム技術の研究開発に特化したテクノロジー企業です。高度なデータ分析とエンジニアリング力を駆使し、金融市場の効率化と透明性向上に貢献するソリューションの開発および標準規格の策定に取り組んでいます。
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会社名:AI MQL合同会社
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所在地:東京都港区
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代表者:上村十勝
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URL:AI MQL合同会社 公式サイト
まとめ:金融市場の未来を拓くClearTrace Protocol
AIやアルゴリズムが金融市場で果たす役割は、今後ますます大きくなるでしょう。それに伴い、AIの判断の透明性や説明責任の確保は、市場の信頼性を維持するために不可欠な要素となります。
『ClearTrace Protocol (CTP) v1.0』の公開は、この課題に対する強力な解決策を提供し、金融市場に新たな透明性と健全性をもたらす画期的な一歩と言えるでしょう。AIの判断根拠を明確にし、国際的な規制に準拠しながら、不正取引を防止するCTPは、金融業界の未来を大きく変える可能性を秘めています。金融機関やプロップファーム、そして規制当局がCTPを積極的に採用し、その標準化委員会に参加することで、より公正で信頼性の高い金融市場が実現されることが期待されます。

