日本の科学技術を守る!FRONTEOのAI「KIBIT」が研究セキュリティに革命
近年、国際的な研究活動が活発になる一方で、日本の優れた科学技術が不当に流出するリスクが懸念されています。このような技術流出は、国の経済安全保障にとって非常に重要な課題です。研究機関では、共同研究者や資金源など、研究を取り巻く複雑な関係性から潜在的なリスクを見つけ出す必要があり、そのための情報確認作業が研究者の大きな負担となっていました。
このような状況の中、株式会社FRONTEO(以下、FRONTEO)は、自社が開発したAI「KIBIT(キビット)」を活用し、内閣府事業の一環として「研究セキュリティ・リスクマネジメントシステム」のプロトタイプを開発しました。このシステムは、2.8億件という膨大な論文データを解析し、研究者の事務負担を大幅に削減しながら、技術流出のリスクを高精度に可視化することを可能にします。これにより、「日本の科学技術は日本の技術で守る」というコンセプトのもと、経済安全保障の確保を強力に支援する基盤が確立されつつあります。

FRONTEOと独自AI「KIBIT」とは?
FRONTEOは、AI技術を社会課題の解決に応用することを目指している企業です。彼らが独自に開発したAI「KIBIT」は、「方程式駆動型AI」という特徴を持っています。一般的なAIが大量のデータからパターンを学習するのに対し、KIBITは専門家の「暗黙知」や「判断基準」を数式(方程式)として学習することで、少量のデータでも高速かつ高精度な解析を可能にします。
これにより、KIBITは、膨大な情報の中からリスクやチャンスを見つけ出すことに長けており、これまでにライフサイエンス、リスクマネジメント、リーガルテック、DX(デジタルトランスフォーメーション)など、多岐にわたる分野で活用されてきました。今回の研究セキュリティ・リスクマネジメントシステムも、このKIBITの高い分析能力が基盤となっています。
FRONTEOに関する詳細は、株式会社FRONTEOのウェブサイトをご覧ください。
「研究セキュリティ・リスクマネジメントシステム」開発の背景
国際的な研究活動が進むにつれて、技術流出や外国からの不当な影響(FOCI:Foreign Ownership, Control, or Influence)が世界的に懸念されるようになりました。日本政府も、2025年12月に「研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書」を策定し、対策を強化しています。
- 内閣府:研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書, https://www8.cao.go.jp/cstp/kokusaiteki/integrity/yushikisha/guidelines_v1.pdf
しかし、研究機関の現場では、研究者自身や共同研究先、研究インフラ、資金源といった膨大な情報を一つ一つ確認する作業が、研究時間を圧迫し、国際共同研究への参加意欲を低下させるという新たな課題が生じていました。このような状況を解決するため、FRONTEOは国立健康危機管理研究機構(JIHS)からの受託を受け、実務者のニーズを反映した本システムの開発に至りました。
3つの画期的な特長で研究セキュリティを強化
FRONTEOが開発した「研究セキュリティ・リスクマネジメントシステム」は、FRONTEOの経済安全保障AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」における「研究者ネットワーク解析ソリューション」を拡張したもので、以下の3つの特長を持っています。

1. 圧倒的なデータ網羅性:2.8億件の論文データを統合解析
このシステムの最大の特長の一つは、その圧倒的なデータ量です。従来の商用データベースに加え、新たにオープンデータをシステムに統合することで、解析対象となる論文データ数が、これまでの約50万件から約2.8億件へと飛躍的に増加しました。これは、世界中の膨大な研究成果を対象にできることを意味します。
これほどの数の論文データを解析することで、医学や工学といった様々な分野を横断した共著関係や、研究活動の実態を網羅的に把握することが可能になります。例えば、一見関係のない分野の研究者が実は共通の共同研究者を持っていたり、特定の組織と深い繋がりがあったりする可能性も、広範囲なデータから見つけ出すことができます。これにより、これまで見過ごされがちだった潜在的なリスクの兆候も、より正確に捉えられるようになるのです。
2. リスクの可視化と「1クリック分析」による劇的な工数削減
研究機関にとって、技術流出のリスクを評価するデューディリジェンス(適正評価手続き)は非常に時間と手間がかかる作業でした。しかし、このシステムを導入すれば、その負担は劇的に軽減されます。
具体的には、システムに研究者名を入力するだけで、その研究者の論文共著者、所属組織、資金源といった情報が自動で収集・解析されます。そして、これらの情報を統合し、リスクに関連する情報が網羅的に提示されるのです。まるで、熟練の調査員が何日もかけて行う作業を、AIが一瞬でこなしてくれるようなものです。
実際の実証実験では、従来人手で行っていた場合と比較して、研究者の検索・特定からレポート作成までの時間を約90%削減することに成功しました。さらに、リスク判定を含むデューディリジェンス業務全体で見ても、対象研究者1人につき1日以上を要していた作業が、わずか約1時間程度に短縮できることが確認されています。これにより、研究現場の作業負荷が大幅に軽減され、研究者は本来の研究活動により集中できるようになります。

3. 株主支配・資金源の深層解析(FOCI分析)
技術流出のリスクは、研究者のネットワークだけでなく、資金源や共同研究先の企業が誰に支配されているか、といった複雑な要因からも発生します。このシステムは、そうした潜在的なリスクも深く掘り下げて分析します。
具体的には、研究者ネットワークに加え、資金を提供している企業や共同研究を行っている企業の株主支配構造(FOCI)まで解析します。FOCIとは、外国政府が企業や組織に対して不当な影響力を行使している状態を指すことが多く、経済安全保障上、特に注意が必要な項目です。システムは、外国政府の影響や国際的な制裁対象となっている組織との関係性を検知し、これまで見過ごされがちだった深層的なリスクを可視化します。これにより、より包括的で高度なリスク管理が可能になるのです。
成果報告シンポジウムで高い評価
この「研究セキュリティ・リスクマネジメントシステム」の実証実験の成果は、2026年1月14日に国立健康危機管理研究機構(JIHS)主催で開催された「成果報告シンポジウム~医療系研究機関におけるリスクマネジメント~」にて発表されました。
FRONTEOの経済安全保障室研究チーム部長であり、滋賀医科大学客員講師の今村 文彦氏が、内閣府や国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)、大学有識者とのパネルディスカッションに登壇し、本システムの有効性と、研究機関における実務実装の方向性、そして今後の展望について提言を行いました。シンポジウムに参加した多くの研究機関関係者からは、本システムの有効性について非常に高い評価が寄せられ、その重要性が改めて認識されました。

今後の展望:プロトタイプから製品化、そして「デファクトスタンダード」へ
FRONTEOは今後、プロトタイプ版で得られた知見や、国立健康危機管理研究機構などからのフィードバックを反映させ、本システムのさらなるセキュリティ強化やデータ品質の安定化を図ります。そして、実運用を見据えた「製品版」へのアップデートを加速していく計画です。
さらに、FRONTEOは、単独の機関への導入にとどまらず、中核となる機関がハブとなり、ノウハウやシステム基盤を集約して提供する「機関間連携モデル(シェアード・サービス)」の構築を目指しています。これにより、予算や専門人材が限られている中小規模の大学や研究機関でも、それぞれの財政状況に応じた最適なプランで、高度なリスク管理体制を構築できるようになるでしょう。
FRONTEOは、このシステムを日本の研究セキュリティにおける「デファクトスタンダード(事実上の標準)」へと成長させることを目標としています。そして、日本全体の経済安全保障リスク管理能力の底上げと、研究力強化を通じた国際的な頭脳循環の両立に貢献していく方針です。
FRONTEOの経済安全保障事業について
FRONTEOは、リスクマネジメント事業の一環として、経済安全保障分野に特化した事業を展開しています。その目的は、膨大な情報と見えないネットワークに潜むリスクを可視化し、企業や組織が経済安全保障に関する事業・経営戦略を策定し、推進することを支援することです。
この事業では、AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」と、長年の実績に基づいた「経済安全保障対策コンサルテーション」を提供しています。「KIBIT Seizu Analysis」は、サプライチェーンや企業の実質株主による支配状態などを解析するシステムで、以下の3つのソリューションを提供しています。
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サプライチェーン解析ソリューション: サプライチェーンにおけるチョークポイント(戦略的に重要な地点)や懸念される組織とのつながりの可能性、依存度を把握します。
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株主支配ネットワーク解析ソリューション: 複雑なネットワーク上での株主間の影響力を、独自の手法で解析し、隠れた支配力の伝搬を把握します。
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研究者ネットワーク解析ソリューション: 機微な技術に関わる研究開発について、研究者の所属組織などに注目した人脈の分析と、それに基づくリスクを把握します。
これらのソリューションは、企業や研究機関が自社内で経済安全保障対応を自律的に運用できる「経済安全保障室」の業務設計をサポートします。
FRONTEOの経済安全保障事業に関する詳細は、FRONTEO経済安全保障事業のウェブサイトをご覧ください。

まとめ
FRONTEOが開発した「研究セキュリティ・リスクマネジメントシステム」は、日本の科学技術を守るための強力なツールとなるでしょう。2.8億件もの論文データをAIが解析し、研究者の負担を大きく減らしながら、技術流出や外国からの不当な影響といった複雑なリスクを可視化するこのシステムは、日本の経済安全保障を強化し、国際社会における日本の研究力を維持・向上させる上で不可欠な存在となるはずです。今後の製品化と普及が、日本の未来に大きな影響を与えることに期待が高まります。

