オーエムネットワーク、生成AIをChatGPTからGoogle Geminiへ全社移行
新潟県新潟市に本社を置くオーエムネットワーク株式会社が、2026年2月1日より、社内公式の生成AIツールをOpenAI社のChatGPTからGoogle社のGeminiへ全社移行しました。この移行は、月々のAI関連コストを大幅に削減しながら、生成AIの活用度を高めることを目指したものです。
多くの企業が生成AIの導入を進める中で、どのツールを選ぶべきか、どのように活用すべきかといった課題に直面しています。特に、既存の業務ツールとの連携やコスト管理は重要な検討事項です。オーエムネットワークの事例は、Google Workspaceを利用している企業にとって、生成AI導入における具体的なヒントとなるでしょう。

なぜChatGPTを選び、そしてなぜGeminiへ移行したのか?
2025年:ChatGPTが業務に浸透した時代
オーエムネットワークでは、2024年頃から一部の社員が自発的にChatGPTを業務に取り入れ始めていました。生成AIの可能性に着目し、その活用を全社的に推進するため、2025年7月には生成AI活用プロジェクト「Re:Work.AI」を立ち上げました。このプロジェクトの一環として、全社の公式生成AIツールとしてChatGPTを正式導入。文書作成、情報収集、アイデア出しなど、多岐にわたる業務シーンでChatGPTの活用が本格的に進められました。
当時の状況を振り返ると、同社は社内のグループウェアとしてGoogle Workspace(Gmail、Googleドライブ、Googleドキュメント、スプレッドシートなど)を基盤として利用していました。当然、Googleが提供する生成AI「Gemini」も選択肢の一つとして検討されましたが、当時のGeminiは、回答の正確さ、日本語の自然さ、機能の充実度といった点でChatGPTに及ばず、業務で活用するには不十分であると判断されました。そのため、Google Workspaceを使いながらも、生成AIとしてはChatGPTを別途契約するという形が取られていたのです。
2026年:Gemini 3の登場が転換点に
しかし、この状況は2025年11月に大きく変わります。Googleがリリースした「Gemini 3」は、その性能を飛躍的に向上させました。特に、複雑な問題を解決する「推論能力」の強化、日本語対応の大幅な改善、そしてテキストだけでなく画像や音声なども同時に処理できる「マルチモーダル処理」の強化は目覚ましいものでした。これにより、Gemini 3はChatGPTと比較しても遜色のないレベルに達し、業務利用に耐えうるツールへと進化を遂げたのです。
オーエムネットワークでは、このGemini 3のリリースを受けて、約3ヶ月間にわたる社内検証を実施しました。この検証の結果、一般的な従業員が日常業務で使う分には、ChatGPTとほぼ同等のことができるという結論に至りました。そして、ChatGPTの年間契約が切れる2026年1月末というタイミングに合わせ、全部署を対象としたGeminiへの移行が完了しました。
「二重契約」の解消がもたらした大きなメリット
Google Workspaceを利用している企業にとって、ChatGPTを別途契約するという状況は、いわば「二重契約」とも言える状態でした。つまり、契約先が2つ、請求管理が2つ、アカウント管理が2つ発生し、管理部門にとって少なからず運用負荷となっていました。Geminiへの移行は、この二重契約状態を解消し、オーエムネットワークに以下の大きなメリットをもたらしました。
1. 管理業務の大幅な効率化
契約、支払い、アカウント管理といった管理業務がすべてGoogle Workspaceに集約されました。これにより、管理部門はベンダーとの窓口を一本化でき、請求書処理の簡素化、従業員のアカウント管理の容易化といった恩恵を受けました。これは、情報システム部門や経理部門の運用負荷を大きく軽減することに直結します。
2. 生成AI関連コストの劇的な削減
今回の移行により、生成AIにかかるコストは従来比で約75%もの大幅な削減が実現しました。これは、Google Workspaceのプランを「Business Starter」から「Business Standard」へアップグレードする差額だけでGeminiを利用できるようになったためです。

3. Google Workspaceとのシームレスな連携
社員は、使い慣れたGoogle Workspaceの画面の中でそのまま生成AIを利用できるようになりました。Gmailでのメール作成支援、Googleドキュメントでの文章校正や要約、Googleスプレッドシートでのデータ分析支援など、日常業務で利用するツールとGeminiが深く連携することで、作業効率が向上し、より自然な形でAIを業務に組み込むことが可能になりました。追加の契約手続きやアカウント管理が不要なため、従業員にとっても導入のハードルが低いことも大きなメリットです。
4. 高度な「思考モード」の活用
今回の移行にあたり、Google Workspaceのプランを「Business Starter」から「Business Standard」へアップグレードしています。Gemini 3には、複雑な質問に対してAIが段階的に思考を重ねて回答を導き出す「思考モード」が搭載されていますが、Business Starterプランではこの思考モードの利用に厳しい上限が設けられていました。そのため、業務で求める品質の回答を安定的に得るのが困難だったのです。Business Standardへのアップグレードにより、この制約が緩和され、Geminiの持つ高度な機能を最大限に活用し、実用に耐えうる回答品質を確保できるようになりました。

移行で直面した課題と具体的な対応策
スムーズに見える全社移行の裏側には、いくつかのリアルな課題が存在しました。ツールの切り替えは単なる技術的な作業ではなく、日々の業務フローや社員の働き方にも影響を及ぼします。特に、既存ツールに慣れ親しんだ社員ほど変化への不安は大きく、導入推進側にとっても試行錯誤の連続でした。オーエムネットワークが直面した壁と、その乗り越え方をご紹介します。

1. 従業員の抵抗への対応
ChatGPT導入初期から積極的に使いこなしていた社員ほど、Geminiへの移行に対する抵抗感は強いものでした。これは、プロンプト(AIへの指示文)の書き方や、AIの出力の「癖」がすべてChatGPTに最適化されている中で、新しいツールに切り替えることへの心理的なハードルがあったためです。新しいツールに慣れるまでには、ある程度の時間と労力が必要になるため、抵抗を感じるのは当然のことと言えるでしょう。
オーエムネットワークでは、この課題に対し、移行の目的とメリットを丁寧に説明しつつも、全社方針として明確にGeminiへの移行を打ち出すことで対応しました。特に、経営層や管理者層が「なぜ変えるのか」を明確に伝え、迷いのない姿勢を示すことが、従業員の理解と協力を得る上で非常に重要だと実感しています。
2. 会話履歴とナレッジの引き継ぎ
ChatGPTに蓄積された過去の会話履歴や、そこから得られたナレッジ(知識や情報)を新しいGeminiにどう引き継ぐかというのも大きな課題でした。これらの情報は、個々の社員にとって貴重な資産であり、失われることは業務効率の低下につながります。
採用された方法は、ChatGPTに過去の会話内容を要約させ、その要約をGeminiに貼り付けるという、極めてシンプルなものでした。これは最もスマートな方法とは言えないかもしれませんが、実務上は十分に機能しました。完璧な方法を待つよりも、まずは「動くこと」を優先した判断が、迅速な移行を可能にしました。
3. 機能差異の洗い出しとカスタムAIの移管
ChatGPTとGeminiでは、細かな機能面で差異がある部分も存在します。オーエムネットワークでは、3ヶ月間の検証期間中にこうした差異を徹底的に洗い出し、代替手段の確認や運用ルールの整備を行いました。この検証期間を設けたことが、移行後の混乱を避ける上で大きく貢献しました。
また、ChatGPTのカスタムAI機能である「GPTs」で作成していた社内ツールを、Geminiの「Gem」へ移管する作業も実施されました。例えば、日常的に利用されていた「メール文章添削GPTs」や「議事録作成GPTs」は、Gemでも同等の機能を再現できています。この移管作業は、社内のAIチームが主導し、仕様調査から手順作成、各部署へのレクチャーまでを一貫して担当しました。結果として、移管後に大きな苦情や問題報告は発生しておらず、カスタムAIの大半はGemでも再現可能であることが確認されました。
Google Workspaceユーザーへの提言と今後の展望
オーエムネットワークの事例は、「Google Workspaceを使っているのに、なぜ別の生成AIツールを契約していますか?」という問いに対する明確な答えを示しています。2025年当時であれば、「Geminiでは業務に使えなかったから」という理由が成り立ちました。しかし、Gemini 3がリリースされた今、その前提は崩れています。
Google Workspaceを利用している企業であれば、プランをアップグレードするだけでGeminiを全社に導入できる可能性があります。追加の契約手続きもアカウント管理も不要で、すでに持っているリソースを最大限に活用できるのです。
もちろん、業務の内容や求める性能によって最適なツールは異なります。オーエムネットワークでも、技術検証や特定の高度な用途ではChatGPTをはじめとする他の生成AIツールを引き続き活用できる柔軟な体制を維持しています。特定のツールに固執するのではなく、常に自社のニーズに最適な選択をし続ける姿勢が重要であると指摘しています。
今後は、Google Workspaceとの連携をさらに深め、グループウェアやメッセージツールにおけるAIを活用した自動化やデータ分析を推進していく計画です。さらに、社内ナレッジの集約と活用基盤の構築にも着手し、組織全体の生産性向上を目指していくとのことです。
オーエムネットワークが3ヶ月間の検証を通じて実感したのは、一般的な業務利用であればGeminiで十分に効率化が図れるということです。この実践レポートが、同様の状況にある企業にとって、生成AI導入や移行を検討する上での具体的な参考情報となることを期待します。
オーエムネットワーク株式会社について
オーエムネットワーク株式会社は、新潟県新潟市に本社を置き、業務システム開発やシフト管理システム「R-Shift」の提供などを手がける企業です。
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会社名: オーエムネットワーク株式会社
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所在地: 新潟県新潟市中央区
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代表取締役: 山岸真也
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事業内容: 業務システム開発、シフト管理システム「R-Shift」
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提供Web: https://www.omnetwork.co.jp/
まとめ
オーエムネットワーク株式会社のChatGPTからGeminiへのAI移行は、単なるツールの切り替えにとどまらず、コスト削減、管理業務の効率化、そして既存業務ツールとのシームレスな連携といった多岐にわたるメリットをもたらしました。特にGoogle Workspaceを利用している企業にとっては、Gemini 3の進化と、それを活用するためのプランアップグレードの重要性が示された貴重な事例と言えるでしょう。
移行に際しては従業員の抵抗やデータ引き継ぎ、機能差異といった課題に直面しましたが、丁寧な説明、実用的な解決策の採用、そして十分な検証期間を設けることで、これらを乗り越えました。
生成AIの導入や活用を検討している企業、特にGoogle Workspaceを基盤としている企業にとって、オーエムネットワークの経験は、AIを最大限に活用し、ビジネスを次のレベルへと引き上げるための具体的なロードマップとなるはずです。最適なAIツールを選定し、そのメリットを最大限に引き出すためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。

