NVIDIAは、世界のロボティクス分野をリードする企業群と協力し、フィジカルAIを現実世界に大規模に導入するための取り組みを発表しました。この画期的な動きは、製造業、物流、ヘルスケア、そして私たちの日常生活にまで、AIの力を広げる可能性を秘めています。
フィジカルAIとは? – ロボットが「考える」能力を持つ時代
「フィジカルAI」という言葉を耳にしたことはありますか?これは、AIが単にコンピューター上で情報を処理するだけでなく、物理的な世界でロボットなどの機械が自律的に動き、環境を認識し、判断し、行動する能力を指します。まるで人間のように、状況を理解し、その場で最適な行動を決定できるAIを搭載したロボットだと考えると分かりやすいでしょう。
これまでのロボットは、決められたプログラム通りに動くことがほとんどでした。しかし、フィジカルAIを搭載したロボットは、予期せぬ状況にも対応し、より複雑なタスクをこなすことができます。例えば、工場で部品の配置が変わっても自分で認識して作業を続けたり、倉庫で様々な形の荷物を効率よく運んだり、さらには複雑な手術を支援したりといったことが可能になります。NVIDIAは、このような「考えるロボット」を開発し、実世界に展開するための基盤となる技術を提供しています。

NVIDIAと世界のロボティクスリーダーが提携
NVIDIAは、フィジカルAIの量産規模での導入を加速するため、ロボットブレインの開発企業、産業用ロボットの大手企業、そしてヒューマノイドロボットのパイオニアを含む、グローバルなロボティクスエコシステムと提携しました。この提携には、以下のような業界を代表する企業が名を連ねています。
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ABB Robotics
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AGIBOT
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Agility Robotics: http://www.agilityrobotics.com/content/agility-and-ai
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CMR Surgical
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ファナック
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Figure
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Hexagon Robotics: https://robotics.hexagon.com/industrial-autonomy-hexagon-robotics-nvidia-physical-ai/
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KUKA
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Medtronic
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Skild AI
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Universal Robots
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World Labs
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安川電機
NVIDIAの創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏は、「フィジカルAIが到来しました。すべての産業企業はロボティクス企業になるでしょう。NVIDIAのフルスタックプラットフォームは、ロボティクス産業の基盤となります」と述べており、この技術革新が産業界全体に与える影響の大きさを強調しています。この広範な協力体制は、次世代の工場、物流、輸送、インフラを支えるインテリジェントな機械を構築することを目指しています。
NVIDIAが発表した革新的な新技術
NVIDIAは、インテリジェントロボティクスの実現に向け、いくつかの重要な新しいテクノロジーとプラットフォームを発表しました。
1. NVIDIA Isaac™ シミュレーション フレームワーク
NVIDIA Isaac™ シミュレーション フレームワーク: https://developer.nvidia.com/isaacは、ロボットの設計、テスト、最適化をバーチャル空間で行うための強力なツールです。現実世界でのロボットの動きを物理的に正確に再現できるため、メーカーはロボットを実際に製造する前に、その性能や安全性を詳細に検証できます。これにより、開発コストと時間を大幅に削減し、より信頼性の高いロボットを市場に投入することが可能になります。
ファナック、ABB Robotics、安川電機、KUKAといった主要な産業用ロボットメーカーは、このIsaacシミュレーションフレームワークとNVIDIA Omniverse™: https://www.nvidia.com/ja-jp/omniverse/ライブラリを統合し、生産ライン全体の開発と検証に活用しています。これは「バーチャルコミッショニング」と呼ばれ、物理的に正確なデジタルツイン(現実世界のシステムを仮想空間に再現したもの)を通じて、複雑なロボットアプリケーションを事前にテストできる画期的な方法です。
2. NVIDIA Cosmos™ 世界モデル
NVIDIA Cosmos™: https://www.nvidia.com/ja-jp/ai/cosmos/は、汎用的なロボットブレインを構築するための「世界モデル」です。ロボットが人間のように環境を認識し、判断し、行動するためには、膨大な量の学習データが必要です。Cosmosは、合成データ(コンピューターで生成されたデータ)を作成し、シミュレーション環境でロボットの行動ポリシーを検証することで、ロボットが最小限の再トレーニングで新しいタスクを習得できるようにします。
今回発表された「Cosmos 3」は、合成世界の生成、視覚におけるリーズニング(推論)、アクションシミュレーションを統合した初の基盤モデルであり、複雑な環境に対応可能な汎用ロボットインテリジェンスの開発を加速させます。
3. NVIDIA Isaac GR00T N モデル
NVIDIA Isaac GR00T: https://developer.nvidia.com/isaac/gr00tは、汎用ロボットインテリジェンスの開発を加速するためのモデルです。ロボットが特定のタスクだけでなく、様々な状況に対応できる「汎用特化型システム」へと進化するためには、人間のような推論能力が不可欠です。
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GR00T N1.7: 商用ライセンス付きで早期アクセスが開始されたこのモデルは、高度な器用な制御を含む汎用的なロボットスキルを、量産対応のロボット展開に活用できるようにします。
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GR00T N2: GTCの基調講演で披露された次世代ロボット基盤モデルです。新しい世界行動モデル(WAM)アーキテクチャに基づいており、ロボットが新しい環境で新たなタスクを成功させる確率を大幅に高めます。年末に提供開始予定で、汎用ロボットポリシー向けの主要なリーダーボードで第1位にランクインしています。
これらのモデルは、NVIDIA Jetson Thor™ ロボティック コンピューティング プラットフォーム: https://www.nvidia.com/ja-jp/autonomous-machines/embedded-systems/jetson-thor/上で実行され、開発者はシミュレーションでのトレーニングから実世界への展開を、より速く、より賢く、より信頼性高く実現できます。
その他の関連技術
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NVIDIA Jetson™ モジュール: https://www.nvidia.com/ja-jp/autonomous-machines/embedded-systems/ ロボットのコントローラーに統合され、エッジ(ロボット本体)でのリアルタイムAI推論を実現します。これにより、ロボットは瞬時に状況を判断し、行動できます。
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Isaac Lab 3.0: https://static.svc.nvidia.com/maintenance/site/index.html?referenceError=0.111fd517.1773793736.196b358f&back=https://developer.nvidia.com/isaac/lab NVIDIA DGX™ クラスのインフラ上で、より高速かつ大規模なロボット学習を可能にする早期アクセス版です。新しい物理エンジンNewton 1.0: https://developer.nvidia.com/newton-physicsとNVIDIA PhysX®: https://developer.nvidia.com/physx-sdkソフトウェア開発キット上に構築され、複雑な操作に対するサポートを強化しています。
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NVIDIA IGX Thor™: https://www.nvidia.com/ja-jp/edge-computing/products/igx/ ヘルスケアロボティクスのような、最高水準の安全性と厳格な規制が求められる分野で、ミッションクリティカルな精度と機能安全を実現するためのプラットフォームです。
フィジカルAIが拓く各産業の未来
NVIDIAのフィジカルAIプラットフォームは、様々な産業分野で具体的な成果を生み出しています。
産業用ロボティクス
ファナック、ABB Robotics: https://new.abb.com/news/detail/134030/prsrl-abb-robotics-partners-with-nvidia-to-deliver-industrial-grade-physical-ai-at-scale、安川電機、KUKAといった企業は、合わせて世界で200万台を超えるロボットを導入しています。これらの企業は、NVIDIA Omniverse™ライブラリとNVIDIA Isaac™シミュレーションフレームワークをバーチャルコミッショニングソリューションに統合し、物理的に正確なデジタルツインを通じて複雑なロボットアプリケーションや生産ライン全体の開発と検証を行っています。これにより、生産ラインで高度なインテリジェンスが実現され、NVIDIA Jetson™モジュールをコントローラーに統合することで、エッジでのリアルタイムAI推論が可能になります。
汎用ロボットブレインの構築
ロボットは、特定のタスク専用の機械から、汎用性と専門性を兼ね備えた柔軟なシステムへと進化しつつあります。FieldAI: http://www.fieldai.com/news/fieldai-accelerates-industrial-customers-adoption-of-ai-in-collaboration-with-nvidiaやSkild AIなどの開発企業は、NVIDIA Cosmos™世界モデルとIsaacシミュレーションフレームワークを活用して汎用的なロボットブレインを構築しています。これにより、ロボットは最小限の再トレーニングで新しいタスクを習得できるようになります。
次世代ヒューマノイドロボットの実現
ヒューマノイドロボット: https://www.nvidia.com/ja-jp/glossary/humanoid-robot/の構築は、ロボティクスにおける最大の課題の一つです。1X: http://1x.tech/discover/nvidia-gtc-2026、AGIBOT、Agility、Figure、Hexagon Robotics: https://robotics.hexagon.com/industrial-autonomy-hexagon-robotics-nvidia-physical-ai/、Humanoid: https://thehumanoid.ai/humanoid-brings-voice-controlled-robotic-fulfillment-powered-by-kinetiqto-life-at-nvidia-gtc/などの企業は、Cosmos世界モデル、Isaac Sim、Isaac Labを活用して、次世代ヒューマノイドの開発と検証を加速させています。
AGIBOT、Humanoid、LG Electronics、NEURA Robotics、Noble Machines: https://www.noblemachines.ai/blog/noble-machines-and-schaeffler-collaborate-to-advance-general-purpose-robots-realism-with-newtonは、NVIDIA Isaac GR00T Nモデルも採用し、ヒューマノイドの産業展開を加速させています。GTCの基調講演では、DreamZero: https://dreamzero0.github.io/の研究に基づく次世代ロボット基盤モデルGR00T N2が披露され、Disney: http://disneyexperiences.com/nvidia-gtc-olaf-robotic-characterのOlafロボットキャラクターも登場しました。
ヘルスケアロボティクスへの拡張
ヘルスケア分野もフィジカルAIにとって重要な機会です。CMR Surgicalは、同社のVersius外科システム向けのロボットインテリジェンスをトレーニング・検証するために、Cosmos-Hシミュレーションを活用しています。Johnson & Johnson MedTechは、Isaac SimおよびCosmosベースのワークフローを活用し、泌尿器科向けMONARCH Platformのシステムをトレーニング・検証しています。Medtronicは、外科用ロボットシステムにおいてミッションクリティカルな精度と機能安全を実現するために、NVIDIA IGX Thor™を検討しています。
広範なエコシステムパートナーシップ
NVIDIAは、フィジカルAIの設計、トレーニング、テスト、デプロイのためのオープンで統合されたプラットフォームを構築することで、ロボティクスエコシステム全体の協力を推進しています。以下のような戦略的連携が、すでに実世界での成果につながっています。
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Skild AI: ABB Robotics、Universal Robotsと連携し、汎用ロボットインテリジェンスを様々な産業やタスクに展開。FoxconnとはNVIDIA Blackwell生産ライン向け高精度組立で提携。
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Lightwheel: https://lightwheel.ai/media/simready Samsungの組立ロボットがシミュレーションで複雑なケーブル処理を習得できるよう、Newton物理エンジンの共同開発とキャリブレーションを実施。
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PTC: https://www.ptc.com/en PTCのクラウドネイティブCADおよび製品データ管理プラットフォームOnshape: https://www.onshape.com/en/からNVIDIA Isaac Simへの新たなロボット設計からシミュレーションまでのワークフローを発表: https://www.ptc.com/en/news/2026/ptc-announces-onshape-nvidia-isaac-sim-workflow。
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WORKR: https://workr.com/insights/workr-to-show-25-hr-robotic-worker-in-action-at-nvidia-gtc-2026-booth NVIDIA OmniverseライブラリをWorkrCoreの一部として活用し、AIプラットフォームをABB Robotics産業用ロボットと統合。
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KION Group: https://www.kiongroup.com/en/News-Stories/Press-Releases/ NVIDIAおよびAccentureと提携し、自律型倉庫ソリューションの開発を推進。
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Microsoft AzureとNebius: NVIDIA Physical AI Data Factoryブループリントを統合し、スケーラブルなエージェント駆動の合成データ生成を可能に。
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CoreWeave: https://wandb.ai/wandb_fc/nvidia-blueprint/reports/Robots-dream-in-simulation–VmlldzoxNjExNzU0NQ NVIDIA Isaac Labを統合してロボット学習パイプラインを構築。
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Alibaba Cloud: NVIDIAのフィジカルAIスタック全体を同社のPlatform for AI (PAI)に統合し、エンドツーエンドのロボット開発を加速。
次世代のフィジカルAIパイオニアによるプロジェクトの始動を支援
NVIDIAは、初期段階のスタートアップからグローバルなオープンソースコミュニティまで、すべてのイノベーターがフィジカルAI向けツールにアクセスできるよう取り組んでいます。
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NVIDIA Inception プログラム: 4万社以上のメンバーを擁するこのグローバルなスタートアップインキュベーターを通じて、NVIDIAはBedrock Robotics、Dexterity AI、Flexion、Lightwheel、RIVR、Standard Bots、Vention: https://vention.io/press、World Labsなどのロボティクスのパイオニアに、NVIDIAのオープンなフィジカルAIスタックへの専用エントリポイントを提供しています。
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Hugging Faceとの協力: IsaacとGR00TをLeRobotオープンソースフレームワークに統合しました。これにより、NVIDIAのプラットフォームを活用する200万人のロボット開発者と、Hugging Faceの全世界で1,300万人のAI開発者が結びつき、オープンソースロボティクスの開発が加速されます。
まとめ:フィジカルAIがもたらす未来
NVIDIAと世界のロボティクスリーダー企業との連携、そしてNVIDIA Isaacシミュレーションフレームワーク、NVIDIA Cosmos世界モデル、NVIDIA Isaac GR00T Nモデルといった革新的な技術の発表は、フィジカルAIが現実世界で大規模に導入される時代の幕開けを告げています。これにより、ロボットはより賢く、より自律的に、そしてより柔軟に動作できるようになり、製造業の自動化、物流の効率化、ヘルスケアの質の向上、さらには新しいヒューマノイドロボットの登場を通じて、私たちの社会と経済に計り知れない変革をもたらすでしょう。
NVIDIAが提供するオープンで統合されたプラットフォームは、イノベーターがフィジカルAIの可能性を最大限に引き出すための強力な基盤となります。この技術革新はまだ始まったばかりですが、その進化は私たちの想像を超えるスピードで進んでおり、きっと近い将来、私たちの身の回りのあらゆる場所で「考えるロボット」が活躍する世界が実現するでしょう。
より詳細な情報は、GTCの基調講演: https://www.nvidia.com/ja-jp/gtc/のリプレイ、およびフィジカルAI: https://www.nvidia.com/gtc/sessions/physical-ai-days/、ロボティクス: https://www.nvidia.com/gtc/sessions/robotics/、視覚AI: https://www.nvidia.com/gtc/sessions/computer-vision-and-video-analytics/のセッションで確認できます。

